伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第38回
西洋医学のお世話になる

欧州で西洋医学のお世話になるなんて、
当然と言われれば当然なのですが、
実際に体験してみると
日本で思っていた西洋医学と実際とは、
ずいぶん印象が違うのではないかと思っています。

その時は、ほんの風邪のひき始めだったのですが、
異国で、初めて医者を訪ねなければならない時ほど、
気が重いことはありません。まだ、来独して
1ヶ月そこそこの頃でした。

一体全体、言葉は通じるのか、
相手が言うことが自分に理解できるのか、
どの程度の病気にどのような治療をするのか、
患者に対してどこまでどのようにフェアなのか…。
考え始めたらキリがなく、
身体のだるさも手伝ってどんどん面倒になり、
日本から持参した市販薬を飲んで布団を被っているうちに
熱が上がり、咳がひどくなる一方。
これはもう、診てもらうしかないな、と観念しました。

ドイツの医療は完全なホームドクター制です。
信頼できるホームドクターと共に
常日頃から、健康管理を自ら自主的に長年行っていると、
医療保険の上で若干優遇される仕組みです。

年齢に合わせた定期的な健康診断、
歯の定期的なクリーニング、
自分の身体のウィークポイントに合わせた精密検査のリクエスト、
年齢に合わせた必要な予防接種を受けることなど、
こういう事柄が大抵、基本の保険料の中にカバーされています。

「何ごともない状態であるときにこそ、
自ら、自分の健康を知り、自らのために努力する者」が
優先して報われる、アジア人から見るとちょっと風変わりな、
でも、言われてみると納得しやすい仕組みがあります。

その代わりに風邪と言えど、本当に必要なときにしか
医者は聴診器を使うこともなく、レントゲンなどの検査事項も
明確にその必要があるときにしか
「実施しましょう」とは言ってくれません。

全ては、最初に
「患者が医者に対して何を要求したいか」を
患者が「述べる」ところで、
「医者の患者への出方が決まる」ようです。
患者もそれなりに予備知識を蓄積・総動員して、
医者を選んで、医者に提案を「述べて」、その助言を聞いて、
自ら判断しなければならない、
実際に経験してみると、なかなかシビアな一面があります。

この日には、ともかくドイツ語の会話集を携えて
ふらふらになりながら、
近所の小さな病院の戸を叩きました。


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2007年1月31日(水)

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