伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第40回
フランクフルトで中医学

幸い風邪をこじらせる程度ながらも、
何度かドイツの診療所のドアを叩くうちに、
なんとなく処方のパターンが飲み込めてきました。

咳を止めて欲しいと告げれば、咳止め、
ノドが痛いと言えば、うがい薬。
患者として訴え出る症状の程度にもよりますが、
実にあっけらかんとした
症状に対するストレートな対処療法です。

これでは、万が一の病気の場合には、発見が遅れるか、
あるいは、手荒な手術を受ける方法しかなくなるのでは、
一旦、そう気が付くと、
根本的に病気の原因を突き止めよう、
病気に罹らないように体調を整えよう、
そういう方針が明らかな
東洋医療のスタイルが懐かしく思い出されました。

フランクフルトにはどの程度の中医学が受けられるのか、
どの程度の鍼灸療法があるのか、また漢方薬は手に入るのか、
そういう思いでいたところ、
東洋の生薬や鍼灸治療の知識が豊富という、
一人のドイツ人の女性を紹介されたのです。
平日は会社勤め、金曜日の午後と土曜日に鍼灸院を開いていたが、
都合で最近、院を閉じたばかりとのこと。

ドイツで、どのようにして勉強をされたのか、
不思議に思って尋ねると、フランクフルトなど、
ドイツの主な都市には、
昔から東洋医学を研究し技術を授ける公の学校がある、
そこを卒業すると学士の扱いとなり、また、
中国の鍼灸学校を卒業したのと同格である、
20年以上も前に、働きながら、
私費を投じて勉強を始め、卒業したのだ、と。

誰もが10歳で将来の進路の選択をする、
ドイツの厳格な教育制度の中で、年齢を重ねた頃に
改めて専門の知識を積むということは、
資金的にも、時間的にも並大抵の努力ではできません。

何が一体そこまで、
あなたを東洋の医療の魅力にとり憑かせたのか、
と重ねて聞いてみれば、
自ら大怪我をしたとき、西洋薬が効かなくて辛い思いをした、
その時、対処方法を自ら調べ尽くしたところ、
東洋の医学に行き着いたのだ、とのこと。

ともかく、この女性による素晴しいガイドに助けられて、
ドイツ人の中でどれほど中医学が、
親しまれようとしているのか、
私にも少しずつ見えるようになってきたのです。


←前回記事へ

2007年2月5日(月)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ