伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第42回
「子どもを大人に育てる」ドイツの大人

ドイツの「大人に育てる」子育ての最大の基本方針は、
「本人が自発的に、自分で自分の意思を他人に明確にする」
のようです。言い換えれば、
「はっきり自分の意思を伝えられなけば大人ではない」です。
これは、日本人にとって少々耳が痛い話です。

「本人の意思を尊重しなさい」と、ここまでは
最近の日本の中でも身近に言われることです。
「で、あなたの意思とは何ですか?それを尊重しますから」
となると、説明に窮してしまうどころか、
そもそもこれを聞かれることさえ最初から少ないのが普通です。

本人の意思を尊重することを無意識に合意していても、
自分の意思内容をはっきり明示することについては、
私自身長い間、注意を払ってきませんでした。
これを気づかせてくれたのは、乳母車を押しながら
公園を散歩する、若い母親と小さな赤ん坊の様子です。

恐らく、生まれてすぐから、
意思を明確にさせていくこの訓練は
無意識の習慣になっているのでしょう。
生まれて間もない小さな赤ん坊の「意志」が何かを
この母親は実に小さな問いをはっきり口に出しながら聞きます。

お腹が空いたの? ハイ? イイエ? ああ、ハイなのね。
ミルクが欲しいの? ハイ? イイエ? え、イイエなの?
じゃあ、ミネラル水が欲しいの? ハイ?そう、分ったわ。
一つずつ確認する作業もさることながら、
子どもの意志が分って自分が納得するまで、
丁寧に繰り返し言葉で確認する様子を見ていると、
赤ん坊の顔を見れば、赤ん坊が何をしてもらいたいか、
以心伝心で分るじゃないかとは、言えないものがあります。

赤ん坊に言葉を習得させるという目的だけではないな、と
察したとき、赤ん坊自身、母親の声に対して、
必死に、応答しようとしていることに気が付きました。
少なくともハイ、イイエで答えられる単純な問いに、
何とかして必死になって応答しなければ、
「欲しいミルクを飲みたいときに飲みたいだけ飲む」
このチャンスをただ逃してしまうだけなことを
もうすでに知っているのでしょう。


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2007年2月9日(金)

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