伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第47回
BADBOYは逃げません

誰にでも、子どもから大人になる間に、
「BADBOY(悪い子)!」なる年齢があります。
その日は土曜日で、繁華街で一遊びしてきた様子の
15歳前後の男の子8人ほどのグループが
電車に乗り込んできました。
そこに、この日はたまたま、コントローラと呼ばれる
切符の検札官が2人乗り合わせてきました。

ドイツの電車路線は、改札口の無い駅ばかりです。
あらかじめ自動販売機を使って
「電車に乗るために、切符を正しく買うよう努めること」は
いつも乗客の意思に委ねられています。
もしも、無賃乗車が発覚した場合、
15歳以上の大人料金適用者には、
40ユーロの罰金がその場で課せられます。
これは大人1人1週間分の食料を買うのに十分な額ですから、
誰もが「絶対払いたくない!」と強く思う額に相当します。

どうやら、この男の子たちは無賃乗車をしていたようです。
コントローラが、彼らのうちの一人に質問を始めました。
今、この時点で「切符を持っているか、持っていないか」、
持っていないとすれば何故持っていないか、が問われます。
もしも、持っていなければ、土地に不案内な旅人であっても
通用する言い訳は、まずよほどでないと無いのです。
もしも、乗客の不手際となれば
「ごめんなさい」を言えとは求められませんが、
罰金を支払うための手続き書類にサインを求められます。

まず、サインを求められたのはグループのうちの一人。
その男の子は、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま
壁に寄りかかって立ち、悔しさ一杯の表情をしています。
この間、彼の親友であろうグループの他の仲間は、
決して彼だけを1人残して隙を見て逃げようともせず、
また、皆で集団でコントローラに向かって
手を挙げたり、罵ったりして抵抗することも
全くしないどころか、必要な問いに答える他は
じっと黙って身動きしないままです。

これに似た光景は、電車の中で時折目にするのですが、
パンクファッションで身を飾った男女も、
ティーンの時代を謳歌している女の子たちも、
その場に居合わせる友達も、最初に発覚した当人も、
一端、無賃乗車が発覚したのならば、
決して走って逃げ去ろうとはしないのです。


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2007年2月21日(水)

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