伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第49回
ドイツ医療保険は中医学を

ドイツ医療保険の一部は、中医学による治療を
カバーすることになっていますが、
日本と全く同じ感覚で、ドイツでも中医学が
親しまれてきたわけではないように思います。
もともと、「医療保険」に対する感覚が
ドイツと日本で異なるようようです。

日本では、国や職場から要求される保険組合に
一応入ってしまえば、よほどの場合を除いて、
個人はそれ以上のことを考える必要は少なく、
診察時でさえ、あまり大きな個人差を患者には感じさせない
実に平等感に満ちたものでした。

ところが、ドイツでも、同じく保険組合に
加入しなければなりませんが、その内容は千差万別です。
個人の保険料の支払い能力、
個人の健康管理への意識、知識や情報収集力、
そして税制度への関心や知識によって、
保険料とその保険で対処できる内容に雲泥の差ができます。
どこでどれだけ支払うと節約に繋がるのか、
知恵比べをしながら、個人にあったものを選んで加入します。

もしも、医師の診断で、
「中医学による治療が必要」となった場合には、
ドイツの医療保険でも、
その費用をカバーしてくれることになっていますが、
この診断をしてくれる医師は、
そう簡単に身近なところに見つからないというのが現実です。

欧州では、中医学治療よりも昔から身近なのは温泉療養です。
ドイツにも各地に大小の温泉保養地がたくさんあります。
医師の判断で、例えば「この患者はストレス過剰、
しばらく暖かな地方の温泉で英気を養う必要あり」
などと診断された場合に利用するものです。
療養をふんだんに楽しむには相応の保険料が必要です。

中医学は、今のところ、医師によるホメオパシーと呼ばれる
ヒーリング治療の分野に相当することが多く、
高級温泉保養地の病院パンフレットに、
「中医学治療します」という案内が見えます。
温泉療養中のプラスアルファで、
贅沢な健康管理対策として社会に浸透しようとしていたのが、
今日までのドイツでの中医学への親しまれ方でした。


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2007年2月26日(月)

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