|  
         第51回 
          国境越えてお買い物 
        「ドイツの付加価値税が19%に上がったわよ!」と 
          フランスに住む友人に電話で話すと 
          「なんの、その数字はフランスよりまだ低いわよ!」と 
          明るい声が返ってきました。 
          そうだった?と後でレシートを引っ張り出してみると、 
          フランスは、一般税率 19.6 %、食料品への税率 5.5% 
          ドイツは、一般税率 19.0 %、食料品への税率 7.0%。 
          数字の上では、どんぐりの背比べというところですか。 
        でも、今のところ、ドイツからの目線では、 
          「フランスの地方」で買った方が、 
          「ドイツの都市部」で買うより、 
          何かと品数が多く価格も安いのです。 
          国境を越える用事があれば、 
          ついでにちょっとした日常の買い物も済ませておきたいと 
          考える人はどうやら私だけではなさそうです。 
          ドイツ国境を越えた、 
          フランスの地方の町外れの広々とした麦畑の中には 
          大型スーパーやショッピングモールがあります。 
        そこには、ドイツ人が好む味付けの食材、 
          例えば、酸っぱいキャベツの漬物や、 
          塩味が濃いドイツ版のサラミソーセージが 
          少なからず並んでいるところを見ると、 
          ドイツ人のお客も多いということでしょう。 
          ドイツで買うと1本あたり2、3ユーロは高くなってしまう、 
          フランスワインが安く手に入るのも有難い話。 
          案の定、レジやインフォメーションではドイツ語OK。 
          と言うより、むしろドイツ人がここに働きに来ています。 
        試しに、「支払いにドイツのECカルテ(ドイツの 
          銀行口座からの直接引き落とし)が使えますか?」と聞けば、 
          「もちろん!使えます」とのこと。 
        国境に住む人々にとっては、隣接している国の数だけ、 
          複数の国のメリットを享受できる 
          生活の選択枝を持っています。 
          勤務先は、フランスで、住まいはドイツ。 
          妻の勤務地はフランスで、夫の勤務地はドイツ。 
          日常生活はドイツで、買い物はフランスへ、など。 
          ドイツ・フランスの間だけではなく、 
          これはどのEU国の間でもありうることです。 
        EU圏の強みで、パスポートの検査無しどころか、 
          車や自転車、あるいは徒歩で、 
          それぞれが、今来た道のそのまま先を真っ直ぐ通るように 
          隣国との間の国境を普通に自由に往来しています。 
       |