伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第67回
「ハイ」と「イイエ」の距離

感覚的にうまくお伝えできるといいな、と思うのですが、
ドイツ語の「ハイ(Ja)」と
「イイエ(Nein)」との間には、
例えば「30センチの距離があります」。

つまり、「30センチ物差しの目盛りで、
ハイが0センチの位置にあるとすると、
イイエは30センチの位置ところにあります。
ただし、ハイ・イイエの間には、何もありません。
まるで真空地帯のように、すぽっと抜けていており、
その中間に存在するものは何もないのです」。

と、まるで算数のような表現を使うのは、
「ドイツ語のハイ・イイエは、まるで0と1という
それぞれの数字、とてもデジタル」
と記すくらいでは到底十分ではないほど、
日本語のハイ・イイエとは
言葉としての感覚が違うことをお伝えしたいからです。

日本語のハイ・イイエは、同じように30センチ定規を
使うとすれば、こんな表現になるでしょうか。
「お話の始まりは、ちょうど15センチの目盛りの位置にあり、
ハイは、15センチを基点にして限りなく0センチに近く、
イイエは、15センチを基点にして限りなく30センチに近く、
の中のいずれかにあります。
お話の内容によっては、途中で15センチの位置から左右に
数センチずつ、振れることはありますが、
お話の最終結論として15センチの位置のままでも
良い場合があります」。
ドイツ語に比べれば、日本語の言葉の役割は
どちらかというと、アナログ的なのかもしれません。

これら2ヶ国語が持つ、1つ1つの言葉の「感覚」の
違いがあることに気が付くまで、私には、
少なくともまるまる1年間は掛かったように思います。

自分の意志を言葉で伝えなければならないことは、
ここに来てすぐに察しましたが、
どういう言葉を使って、
どういう話の筋道で話せば、言いたいことが効率よく、
しかも望む結論が得られるように導けるか、
ということについては、
しばらく、私には、なす術がありませんでした。
一語の言葉が持つ「感覚の違い」に
気づいていなかったからかもしれません。

語学やコミュニケーションのノウハウの習得で
片付く問題ではないようなものが
言葉にはあるようだ、という気がしています。


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2007年4月9日(月)

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