伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第68回
「お得なセット」はありますか?

思えば、喫茶店に入ってテーブルに座ると、
こちらが黙っていても、まずは
「お冷が1杯出てくる」無言のサービス、
そして、こちらからお伺いする前から、
「お客様、コーヒーとケーキでしたら、
こちらのセットがお得です。」などと告げてくれる、
至れり尽くせりの心遣いに満たされていた日本。

日本の中の美しい習慣、気が利いたサービスも
一歩、国の外に出てみれば、
「言葉」という壁に、思い切り頭をぶつける、
そんな一面も持ち合わせていたのだな、と
今更ながら気づかされます。

でも、ドイツに居る人の皆が皆、気が利かず、
サービス精神が無いわけでもない様子なのです。
「サービス」という言葉が持つ意味にも
日本語とは違う、感覚の違いがあります。

世の中は広いので、わざわざ
「お得にしなくてもよいお方」も居ます。
「お得なセットはありますか?」と尋ねられない限り
安価なセットのことを自ら告げない方が失礼にならない、
かえって良いサービスになりうる場合もあり、です。
メニューの中にすでに、
そう「書いて」サービスしているか、
もしも、知りたければ、お客が「尋ねる」でしょうから、
「ええ、もちろんございます、お客様!」と
そのときに丁寧に答えれば十分なサービスになります。

そもそも、「言う」という行為を
強く意識しなければならないことだけでも
日本語の言葉を使う感覚の中では、
あまり必要とされていなかったことでした。
できるだけ、ストレートに「言わなくてもよい」、
できるだけ、ハイ・イイエのどちらか1つだけより、
そのうちのどちらとも受け取れる意味のうちの
「よりどちらか」を伝えるソフトな言い回しを使って
コミュニケーションを図る場面が多くありました。

一方、グレーゾーンが全く無い、
0か1で切り分けた話を組み合わせた
ドイツ語スタイルでも、ドイツに住む人々は
不自由なく豊かなコミュニケーションをとれています。
でも、私には0と1の話の組み合わせスタイルで
あることが長い間、見抜けませんでした。
一体、何をどこからどう告げてよいものやら、
さっぱり分らなくなっている自分自身に気が付くまで、
ずいぶんな時間を費やしていたと思います。


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2007年4月11日(水)

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