伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第72回
アルプスより北側は硬水エリア

毎日、水道の蛇口を捻らないわけにはいかないし、
このカルシウム対策を知らずしてドイツには住めない、と
分ったので、思い切って周りのドイツ人に教えを乞いました。

こんな些細な、今から考えると実につまらない常識ばかりを
1つずつ拾って歩くのが移住初期の毎日の仕事です。
しかも、皆が「常識」と思っている些細な事柄ほど、
「何故そんなことを知らないのか?」という感情が入るので
迂闊な言葉で聞けないのです。

早い話、「水を最小限に使う」、
「毎日その日の最後に、
水場の水滴を残さないように完全に拭き取る」、
「水周りは、ときどき酢水で拭き清め、
湯沸かし器、食器洗い機、洗濯機などは
市販のカルシウム溶剤を使って定期的に掃除し清潔を保つ
(掃除したあとは必ずその水を拭き取る)」が
3度の食事を調理する以上に重要なことでした。

「水を使ったあと、シンクが白くなるわよね。
 あれを無くすにはどうすればよいの?
真っ白になってしまって…」
と言いかけて口をつぐんでしまいました。
「げ、そんな汚いことをして!」というか、
「今日まで君は何をしていたのか!?」
と言わんばかりのギョッとした表情。
これを常日頃から冷静であること良しとする
ドイツ人にしては、珍しく見せてくれたのです。

「日本の水は、とても軟水でね。あんなに白くならないのよ。」
慌てて言葉を重ねたところ、
へぇ、という表情に変わったので、安堵。
そんなに水を流しっ放しでも平気な軟水の国が
この世にあるのか、と逆に質問をされたほどです。

「アルプスのこっち側(北側)は特になんだけど、
ドイツは一般的に硬水なのよ。スイスは万年雪の清水で、
ここよりずっと水が軟らかいし、アルプスより南のイタリアでも
そんなに硬くはないです。
でも、まぁ、どのみち水を使ったら、
少なくとも最後に水周りをきちんと拭いて
水気を残さないのは欧州の常識よね。
そうすれば、汚くなること無いでしょ…。
白く積もったところは、そういう薬剤で溶かし落とす!」

シンクから水滴が飛び跳ねるほど勢い良く蛇口を捻らず、
溜め水にして使うことはあっても、流しっ放しにはしないため、
いわゆる台所の「流し台」のシンクは、大抵の家屋で
小さな洗面器がやっと1個入るくらいの大きさが普通です。


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2007年4月20日(金)

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