伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第73回
捨てるほどお金があるならねぇ…

長年、水で鍛えているドイツの節約精神は、
お金の節約にもしっかり反映されています。
「まったく、もう! あなた、そんなに
お金を無駄使いしちゃあ、ダメじゃあないかァ…」
と、このお節介なセリフを街の中で聞かされるようになると、
一瞬、「?」とはなりますが、
あれ、ドイツ社会は私を受け入れてくれるようになったのかな、
とまんざら悪くない気分で、
そのまま、相手の言葉に耳を傾けることにしています。

例えば、いよいよ腕時計の電池が切れそうになったので、
早めの電池交換に行ったとき、店員さんいわく、
「おや?これは、まだ動いていますよ!
電池はあります。時計の電池交換は、
針がちゃんと止ってから来てください。」

靴を修理しようと靴屋に持って行くと、
その靴底を見て、頭ふりふり、店のご主人いわく、
「これはまだ、大丈夫!
うぅん…あなたがねぇ、本当に捨てるほどお金があるならねぇ、
あなたのためにこれを修理して、
そのお金を僕がもらってあげてもいいよ。
けどね、もう少しお金は大切に使うべきだよね。
あなた、ね、無駄使いするのはお止めなさいッ。」
他にもまだまだあります、ハム屋の女将さん、
バスの運転手、美術館の職員…。

別に彼らが仕事をせずに休みたいのではなく、
相手がお金を使うほどの状態でないのに
使おうとしているのが「許せない!」らしいのです。
時計も靴も、先方が納得する状態になってから、
再び持参する労がこちらには増えるのですが、
まぁ、いいか…というか、まんざら悪い気はしません。

職人気質といえば、職人気質。
人様へのお節介の気持ちも少々手伝って、
考えなしにお金を無駄使いする人と見ると
気が治まらないらしく、実にズバリと言ってくれます。
自分や相手にお金があっても無くても、
意味のないお金の使い方と見える行為、
無理・無駄・無意味がどうも許せないようです。
逆に、この人には言っても無駄ダと見られたら、
もう最初からそう言ってはくれません。

誰もがたっぷり休暇を取って
人生を優雅に有意義に過ごすことに気炎をあげつつ、
その背後には、日頃の節約・倹約に
徹底的に取り組む姿があります。
消費に慣れた日本人から見るとかなりシビアな、
そう簡単には真似ができないほど質素な生活スタイル。
私にはドイツ本来の姿は「非消費型社会」に見えるのです。


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2007年4月23日(月)

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