伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第74回
白いアスパラガス

初夏のドイツの食卓には欠かせないアスパラガス。
本来は日本の、新緑の頃の「竹の子」と似た初夏の味覚です。
このシーズン、街角のレストランには
「本日、アスパラガスあります」という看板が上がります。

ドイツで愛食されるアスパラガスは、
必ず「白アスパラガス」の方です。
緑色のアスパラガスは店頭にはあっても、
それはどうやらイタリア人、アジア人好みの外国人用。

畑から掘りたての新鮮さが求められるので、
田舎の道沿いにはこのシーズン、
アスパラガス売りの屋台が立ちます。
シーズンや形や大きさにもよりますが、
1キロ7ユーロもするので、ずいぶん高い買い物です。
それでも1シーズンに2、3回は食べなければ
どうも初夏がやってきた気がしない、と
それほど、楽しみにされている食材です。

早速、1束買い求めて自己流で挑戦したところ、
少々熱湯を通したくらいでは青臭くて不味く、
ドイツ人が執着したくなるほどの旨みが
さっぱり分りませんでした。
そこで、アスパラガス代を提供することと引き換えに、
調理方法を教わりました。

白アスパラガスの皮をピーラーでできるだけ厚く剥きます。
レモン汁を少々入れて、まず皮を湯がいて取り出し、
アスパラガスの滋味を引き出したスープをとります。
そのスープの中で、皮を剥いたアスパラガスを
塩・砂糖それぞれ少々を加え、
水煮の缶詰並みにくたくたになるまで煮ます。
茹で汁は捨てずに漉して、玉子入りのホワイトソースと、
生クリーム、塩・胡椒で調味しアスパラガス・スープに。

付け合せは、必ずベビー・カルトッフェルンと呼ばれる
小さなジャガイモを塩少々で茹でて皮を剥いたもの。
白いお皿に白いアスパラガス、皮を剥いたジャガイモ。
日本でいうとボンレスハムに似た味わいのハムの
薄切りを1枚添える場合もあります。
アスパラガスには、細かく砕いたパン粉を振りかけ、
その上に溶かしバターをたっぷり絡めます。

アスパラガスに敬意を示し、ナイフを入れず、
「長いままで食べる」のが礼儀と教えてくれた人もいます。
「けど、あなたの場合は特別、
例外ってことにしといてあげるわ。どうぞナイフを使って。」
でも、茹で上がったアスパラガスにナイフを入れてみて
初めて分ったのです。
繊維の束がスッパリ切れずに、皿の上で
柔らかいアスパラガスが潰れながらクタクタと踊る一方。
どちらかというと長いまま食べるようにした方が
ドイツの初夏の滋味を口いっぱいに楽しめるようです。


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2007年4月25日(水)

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