伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第80回
即実戦「どうぞ、あなたのお好きになさい」

どうもいつもの電車通りから見える、あの場所は
たぶん幼稚園なんだろうな、と思われる、
朝から小さな子どもたちが集まる建物がありました。
…だろうな、というのも、
皆でお歌、皆でお遊戯、今は休み時間、
というような先生指導の規則正しい時間割がある
日本の幼稚園・保育園とはずいぶん違う様子なのです。

開園中は、何時見ても、通っても、
4、5歳くらいの小さな子どもたちが
晴れた日にも、少々雨や雪が降る日にも
庭を力いっぱい駆け巡っている姿で一杯です。
先生らしい人が数人で、園庭に散らばり
マグカップに入れたコーヒーを片手に
じっと子どもたちの様子を見守っています。

あまりにも何時見ても同じ様子なので、
「どうぞ、あなたのお好きになさい」と
子どもたちは1日中どころか、
年中、幼稚園では自由に過ごしているのではないかと
ようやく見当が付くようになりました。

実際に、幼稚園の子どもを持つ人に聞いてみると、
「当然、その通りよ!」とそれ以外に一体、
日本の幼稚園では何をするのか?と驚かれました。
たまに、皆で公園に出たり、パンなど簡単なランチを
皆で食べたりする日もあるけれど、
外遊びが好きな子どもは1日中、遊具で遊び、
部屋で遊ぶのが好きな子どもは、工作をしたり、
絵本を読んだりして過ごすとのこと。

必要なら水筒やリンゴやパンを入れた弁当箱を持って登園するので、
それを飲食するも自由。
公立施設では、原則として大抵12時まで、
時折の昼食を兼ねた小さなおやつ代込みで、
親の収入にもよるが毎月50ユーロ前後の月謝、
子どもたちは「自分の意志」でその日1日を過ごす。
何々教育と特別に銘打っていなくても、
ドイツの幼稚園はそうするのが「当たり前」とのこと。

実際に通っている子どもたちに声を掛けると、
自分の水筒から水を飲もうと思ったときには
いつの間にか空になっていたり、
その日のボール1個確保するにも工夫したりで、
子どもなりに「意志を通す」にも相応の知恵が要る様子。
自由だから、必ず自分の意志を通せるかというと、
必ずしもそうではない、なかなかのサバイバル戦です。
ドイツ版「生きる力」の訓練は生まれたときから即実戦。
いきなり路上で教習が始まった自動車学校を思い出します。


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2007年5月9日(水)

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