伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第83回
移ること・住むこと

どうしてドイツに移住という形で来ることになったのか、
ということについて、
私は詳しく記していませんでした。
企業を通じた駐在や留学などの海外生活経験が全く無いまま、
風に吹かれるように
日本を出てきてドイツに「移り」ましたが、
この先は、あまり簡単ではありません。

本気で外国に「住む」ためには、命綱無しで
垂直に切り立った崖をよじ登らねばならならない、
ようなイメージが私にはあります。
ちょうど、このコラムを書き始めたころが
ようやく1段目の崖を登り終えたところでした。
一足飛びに軽々と登れる人もいらっしゃると思うのですが、
私の場合は、毎日、おろし金で
顔を擦られるような思いをする上に
さらに塩を塗りこめられるようなことばかりが
何年も続いていたような、あの崖登りの辛さを
まだ、思い出したくもないという気持ちがありました。

けれども、少しずつ筆を進めさせていただくうちに、
以前と違った周りの景色が
ようやく見えてくるようになりました。
そして、今から崖登りを始めてみようか、
という方も多くいらっしゃるのに気がつくようになりました。
また、私と同じ時期に
共に崖登りをしていた仲間も大勢いること、
そして、私自身もこの先、まだまだ、
ぼんやりしている場合ではないことも思い出しました。

外国に暮らすというだけなら、もっと優雅な道を通って、
楽々実現する方法が別にあるのかもしれません。
けれど、山を見れば登りたくなる山男山女がいるように
崖を見たら、どうしても登ってみたくなる人もいます。

この崖登りに定番マニュアルはありませんが、
崖を登りきった大先輩は世の中に大勢いらっしゃいます。
その経験のお話を聞き重ねていくことは、
私にとって、とても大きな励みになりました。
この邱先生のホームページも、
大事な心の支えであり、道しるべの一つでした。
2000年から続くこのホームページが
もしも、この世に存在していなければ、
私は、1段目の崖さえ登りきるどころか、
外国に「住む」ために崖を登る勇気も得られず、
外国に「移る」チャンスに気が付くことさえも
全くなかっただろうと思います。


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2007年5月16日(水)

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