伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第85回
日本にホームスティ!

「今度の夏休み、あのお宅の子どもさんが
日本にホームスティに行くんですって…」
ドイツの人からそういうお話を
よく耳にするシーズンになりました。
日本のホームスティ先へのお土産は、
何がいいかしらねぇ…というような話を
初めて聞いたときには、私も嬉しい気持ちで、
一生懸命、答えたものでした。
けれど、ここ何年かを過ごしているうちに、
ホームスティ先からドイツに戻った後に、
う〜ん…と唸らざるをえない土産話の方を
たびたび聞かされる側になりました。

こちらでは「ごく普通の欧州人の容姿」で、
ごく普通の生徒である、
特に高校1年生前後の年齢の男の子が
「ニッポン」に足を踏み入れたとたん、
突然、トップ・スター並みの扱いを受ける、
「息子の話はそうなのだが、これは本当なのか!?」
という話をよく聞かされるのです。

日本に行けば、どこへ行っても何をしても、
四六時中、黄色い声援に囲まれる、
しかも、日本のどの地方のどの町へ行っても、そう。
地域の学校を訪問し、サッカーの親善試合で
ボールにちょっと触れようものなら、やんやの大歓声。
英語の時間には先生からの指名を受けて
音読でもすれば、その日1日、
うっとり視線の集中攻撃を浴びる…、と。

平素には絶対起こりえない状態で夏を過ごした挙句、
子どもによっては欧州に帰国してから、
自分に自信を持つようになるどころか
まるで、骨抜きのようになってしまい、
しばらく現実に戻れぬ状態に陥ることもあるようです。
ああ、楽しかったでは、終らないようなのです。
ドイツ人のある母親が続けて言いました。
「私は、このホームスティが息子の人格形成に
悪い影響を与えたのではないかと心配しています。」

彼女にしてみれば、日本文化が、日本人が…という
話をしたいのではありません。帰国した息子に
「それは、貴方の本当の人間性や実力の結果ではないのでは?
それに惑わされてはいけません。」
と強く諭さなければならなかったのでしょう。
諭しながら、大勢の人との出会いの道中で、
この異様な人気加熱ぶりと息子の舞い上がりぶりに
懸念を持つ人には誰にも出会った様子が無い、
と気が付いたようなのです。
だから「これは本当なのか?」と
彼女は心の底から不思議に思わざるを得ないのです。


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2007年5月21日(月)

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