伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第87回
封筒をとりかえて出直して

毎日、節約・倹約の小さな積み重ねが必要な
「ドイツの基本生活」を実践すべく、
税金還付のための必要書類を税務署に郵送しようと
郵便局に行きました。
この日の窓口は混雑していて
列の最後に並び、やっと私の順番になりました。

窓口の女性に「切手をください」と封筒を差し出すと
彼女は、フムと頷き、私の封筒を一目見るや
机の引き出しから、封筒の寸法を測る
大きな四角い黄色定規を取り出しました。
これをパーンと封筒に当て
定規からはみ出た両端1センチずつを
ヒラメかカレイの縁側のように
両手でヒラヒラ折り曲げて見せながら、私に
「切手が欲しいの?」と聞き返します。

「はい!」と答えると、もう一度、フムと頷きながら、
封筒の表書きに「税務署御中」と書いているのを
まじまじと見つめ、再び、縁側をヒラヒラさせて、
「切手が欲しいの?」と真面目な顔で繰り返します。
だんだん、???となる私の顔を見て、
私の後ろに並んだドイツ人の列の間から、
クゥッ…、クッ…ククク…と
ついに押し殺した笑い声が聞こえてきました。

こういう時に、なぜ笑うのだと怒る必要はありません。
ドイツ人、他人に対しては滅多なことで、
眼前で笑ってくれないのです。
「笑い」を表してくれるときには、
かなり「親近感」を示して
何かを伝えようとしている場合があります。
私も負けずに彼女の顔をニッコリ見つめ直すと、
やっと彼女は口を開きました。

「この封筒は定形外、
送料が4ユーロ40セントにもなるのよ!
この定規と同じ大きさの定形なら、
たったの1ユーロ45セント!」
お金を節約したいのなら、
封筒をとりかえて出直しておいでとのお達しです。
私は、節約したくて、日本から持ってきていた
残りものの事務用封筒を使っていたのに…。
でも、もう時間が無いので、
私は今回これで出します、と答えると、
「アナタ、切手が欲しいの?証紙が欲しいの?」
と続きます。…う〜ん????
「切手なら、4ユーロ40セント、
証紙(価格印刷したもの)なら3ユーロ40セント!」
え〜ッ、本当?もちろん、証紙を頂きます!

このシーズン、「税務署御中」という宛名の封筒を見ただけで
税金還付を受けたい人の気持ちが
分ってくれるだけでも大変有難い話なのですが、
ドイツ的節約生活のノウハウを知るには、
こんな体験を通さないと、
他所者にはなかなか分らないのです。


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2007年5月25日(金)

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