伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第93回
欧州は「オズの国」?

ひたすら時間財布の中身を使い、
お金財布の中身をできるだけ使わないようにして
細〜く長〜く暮らすのが、
大抵の欧州国でのごく普通の暮らし方です。
そうせざるをえない、暮らしの背景があります。

これとは逆に、数年という期限付きの滞在であれば、
お金財布の中身もできる限り有効に使って、
最大限有効に滞在を楽しむ、という暮らし方もあります。

私の場合は、前者を選ばざるを得ない状況から始まりました。
大抵のドイツ人は、
「どうしてそこまでして、ドイツに住みたいと思うのか?」
とびっくり仰天して驚いて聞いてきたものです。
「え〜?ガイコクジンが!?」という気持ちと、
「日本の方が、税金がずっと安いでしょうに!何故?」という
驚きもあるでしょう。
しかも、その前には
「現地人とて決して楽な気分で暮らしているわけではないのに」
という暗黙の言葉が隠れています。

暮らしのスタートの時点から、
ドイツ人のドイツ生活の本音を
急いで探っていかざるを得なかったお陰で、
私が持っていたそれまでの「欧州観」は
「こりゃ、想像以上に大変だ!」
と3日も経たずに覚悟を入れ替えなければ、
なりませんでした。
今、改めて振り返ってみると、
日本からみえる「欧州観」はどうしてああも、
賑やかだったのだろう?と不思議にも思います。

フランクバウムの作品の「オズの魔法使い」では、
竜巻に巻き上げられた主人公ドロシーが
魔法使いオズが住むエメラルドの町を訪ねたとき、
緑色のグラスが入った眼鏡を掛けるように言われました。
眼鏡を掛ければエメラルドで出来たように見える街、
眼鏡を外せばタダの普通の街になりました。

旅行の途中に立ち寄ってくれる、
親しい友人知人にも2色あります。
「やっと休暇を取って、大金を使って来たんだから、ゴージャスに。
私の欧州への夢を崩さないで!」
「やっと休暇を取って、大金を使って来たんだから、そのままに。
フツーの欧州を見せて!」
旅行とはいえ、エメラルド色の眼鏡の使い方も、
時間財布やお金財布の使い方も人それぞれ。

その楽しみ方はどちらでも構わないのですが、
どちらかというと今の日本には後者がお勧めです。
欧州にある、心のエメラルドを探してみたいなら、
眼鏡をちょっと外してみたほうが
素早く、たくさん見つかるような気がしています。


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2007年6月8日(金)

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