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         第97回 
          お金持ちさん、こんにちは! 
        私が思っている世の中の疑問の1つに、 
          「欧州人の理想とするお金持ち、とは 
          どんな生活スタイルなのか?」 
          というのがあります。 
        アジア人や米国人から見て求めるお金持ちスタイルと、 
          欧州人のそれは、同じなのでしょうか? 
          というのも、多くの欧州人が、 
          今更、欧州の王様と同じ生活をしたいと考えているようには 
          見えません。 
          そもそも、人生の糧として求めているものに 
          「お金」への執着心が(少なくとも表向き)、 
          そう強く見えない気がするのです。 
        そういう疑問を持ちながら、 
          テレビの娯楽番組を気をつけて見ていますと、 
          定番番組ではありませんが、 
          お金持ちを訪ねるという場面が時折みつかります。 
          私の勝手なネーミングで、 
          「お金持ちさん、こんにちは!」。 
        この「お金持ちさん、こんにちは!」的番組を観ますと 
          一応、高級車や豪邸、時計や宝飾品などを映し出します。 
          けれども意外と、カメラはあっさりしていて、 
          あっそう、ふ〜ん、という感じで通りすぎます。 
          「これは、なんと○億円!」という字幕は入りません。 
          ですが…これとは別に…と静かに取材が続きます。 
        カメラで大写しにされている欧州人のお金持ちさんは、 
          大抵、GパンにTシャツの普段着で、 
          「お金をセーブしている」、「ナチュラルに生きている」 
          というポイントには大変オープンで取材に積極的ですが、 
          「あの人はリッチだ」という語感を大変嫌う様子です。 
        やがて、カメラが取材に一生懸命になる場面が分ってきました。 
          欧州人のお金持ちさんが理想としているのは、 
          電気も水道もないような島一つ、 
          あるいは大きな森一つ購入し、その中で、 
          完全自給自足で暮らせるような農園を持つ、ことのようです。 
          原始、野生に戻るような自然の中の生活スタイルの場を持つことが、 
          どうやら欧州人の憧れを集めやすい様子です。 
        ある青年実業家は、こうでした。 
          森の中の眺めの良い丘の上に家を建て、 
          周囲にはビオ(有機栽培)の農園を持っている。 
          時折、家族と共にここに来て野菜を摘んで過ごす、 
          この自家製の野菜や肉で、専門のコックが料理する。 
          「ここに来ると自分がリフレッシュされるのが分かる。 
          食べるものを作るところから自分をコントロールし、 
          自分の人生に向かって、 
          積極的に生きていくように心がけている…」 
          などと熱っぽく語る姿。 
        たいていの取材のオチは、必ずといってよいほど、 
          自給自足の農園生活をぐぐっと拝見という場面にあります。 
          そして、視聴者には、番組を見ると 
          「なんだ、お金はなくても、それくらいならできる!」 
          という一味違う満足感を得るようにできている、 
          と思えるのです。 
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