伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第99回
子どものケンカには、大人が…

6月も下旬になると、夜10時過ぎても明るいのです。
このシーズン、午後9時くらいまで開いている、
カフェの戸外の椅子にくつろいで、
ビールやワインをグラスに1杯頂戴しながら
大人たちは、ゆっくりと夕涼みを楽しんでいます。
そんな中、広場の片隅にいた14歳くらいの男の子たち
8人あまりのグループの中で
やいやいと小競り合いが始まりました。

あれ、子どものケンカかな、と
最初は周りの誰もがそう思う程度だったのですが、
そのうち、1対1で2人の男の子が、
互いに手を出し、足を出し…
ついに口だけでは収まらなくなりました。
残りの子どもの中から、おいおい…
おい、ちょっと…などと声が出て、
最初のうちは双方を引き止めに入るのです。
でも、そのうち
こりゃ、それぞれ思いっきりやり合うところまでいくな、
となると、1対1を止めるような、見守るような、
ジャッジをするような、ちょっと身を引く格好になります。

そこまで状況が変化したのを見ると、
周り中の大人の特に女性、母親年齢の人が皆、
お〜っと!、ちょっとぉ…!と、
大人がくつろぐ時間を邪魔するなとばかりに
一斉にブーイングを発したのです。
その場に、男性もいるのですが、こちらは
父親然とむんずと太い腕を組んだまま、
ぐっと子どもたちの様子を睨み据えています。
そのブーイングに、一寸、ひるんだかに見えた当の本人らは、
まだ、腹のおさまりが付かぬと見えて、
もう一度、パコン、パコンと手と足を出しました。

その拍子に、店頭の植木が転がったのです。
これを見て、堂々とした母親然とした女性が一人、
すっくと立ち上がって、子どもらに近づき、
当の2人の間を割り、皆を見回して一喝したのです。
「お家にお帰りッ!」、
この声を聞くや子どもらは、縮みあがり、
ばらっ、ばらっと引き下がりに掛かりました。

状況が悪化したと見て、
すぐに警察に連絡した大人もその場にいたようです。
そこにサイレンを鳴らさず、ランプも点灯させずに、
2台のパトカーが静かに子どもらの脇に停車しました。
ドアが開いて、警察官が出てくるころには、
何事もなかったように、子どもらは平静に構えています。
子どもなりに正しいケンカだと思っているから、逃げません。
この間、ほんの5分足らず、
私は、他の女性に混じって一声を発するどころか、
この大人たちの、他所の子どもに対する
堂々とした素早い立ち振舞いに、ただ驚くばかりでした。


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2007年6月22日(金)

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