伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第102回
馬子にも衣装どころか、一段と美しく

晴天が続く良い気候が手伝って、
今年は、5月ごろから近くの教会で式を挙げたばかりの
新郎新婦の姿を街中で見かけるようになりました。
お天気が良い日には、
さっと教会の扉が開いて新郎新婦が登場し、やがて、
白いリボンと花束で飾ったオープンカーに乗り込んで、
晴れやかな笑顔で手を振りながら通る姿が見られます。
大勢のアジア人が憧れて、ちょっと真似したくなる
欧州らしい光景の一つだろうと思います。
つい最近にも、ご近所の息子さんが
地元の教会で挙式されたところです。

結婚式を挙げる場所は大抵、
どちらかの実家が世話になっている土地の教会か、
日頃から季節の行事ごとに親しんでいる、
近くの教会になるようです。
「人生の節目だから」という前提があるからこそ、
「いつも通りに」する、という
ドイツらしい質素な生活のスタイルが
ストレートに表れています。
旅行会社のパンフレットの中から、
式場を選んで海外挙式を、など
遠くの見知らぬ外国まで足を運ぶというスタイルは、
この国ではまだ聞いたことがありません。

そして、本場と言えば本場、
あたり前と言えばあまりにあたり前なのですが、
教会の表に並ぶ正装姿の一同は、
さすがに堂に入ったもので
馬子にも衣装どころか、これがまた、一段と美しいのです。
花嫁衣裳が素晴しいのは今更、言うに及ばず、
遠目に何度、その場に遭遇しても、
目から鱗が落ちる思いがするのは、
新郎や親戚男性が身にまとう
モーニング・コートと呼ばれる正装です。
その人の年齢や体格を選ぶことなく、
身体に添って流れるように身を包みこんだコートと
パンツのラインが
ピタリと合った衣装が持つ美しさには、
そう滅多にお目にかかれるものではありません。
着くずれが全くない西洋正装とは、
こういうものだったのかと、
異文化圏の人間なりに納得してしまうものがあります。

この時だけは、お互い見知らぬ同士でも、
そして、異文化圏から来ていようとも、
一同の傍を通り過ぎる人が
「ご結婚おめでとう!」と一声掛けたり、
車のクラクションをパパパーッ!と
お祝いの気持ちで鳴らしたりして通り過ぎます。


←前回記事へ

2007年6月29日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ