伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第106回
クーラーが欲しいなぁ…

アジアから見ると、今頃になって!?
と驚かれるかもしれませんが、
近年の異様な夏の暑さには、ついに我慢がならぬと
目下、ドイツでは冷房器機が普及しつつあります。

従来のドイツの夏は、「クーラー無し」で
十分快適に過ごせる程度の暑さだったといわれています。
冷房器具が急にオフィスや店舗、自家用車などに入り始めたのは、
2003年夏の猛暑以降のこと、だそうです。
それまでは、自家用車でさえも、窓を開ければ
自然な風が心地よいから冷房は必要ないと
取り付けない人が多かったのです。
でも、今年に入ってからは、電車やバスなどの
一般公共乗り物に、冷房車両が導入されるようになりました。

そして、個人の家には、まだこれから、です。
ドンと大きい床置き式冷房器具が、
1台500ユーロ以上…電気代も掛かるし、高い買い物です。
ひとまず、安い扇風機で何とか工夫してみてからでも、
来年の夏、涼しかったらどうしよう…という懸念も入るので、
一家の買い物としては、どちらかというと後回し。
それが、今、少しずつ電気店の売り場を拡張しています。
すぐじゃないけど、来年のボーナスで、
今度は、クーラー買おうかな…と考えたくなります。

ドイツ家屋は夏ではなく、
冬を快適に過ごすようにできています。
日中でも、氷点下なのが普通の冬の気温ですから、
ドイツ家屋には、冷たい外気を遮断して密閉し、
室内の暖気を逃さない2重窓が取り付けられています。
年間の「暖房費」の節約にはこれが必需品でした。

少なくとも今日までのドイツでは、
冬用に2重窓が取り付けられた家屋構造を利用して
こういう具合に暑さに対処できていたのです。
まず、早朝、まだ空気が冷たいうちに家中の窓を
全開にして空気を入れ替え、室内温度を下げます。
そして、陽が昇り燦々と輝く頃には、
ぴったり2重窓を閉めて外の熱気を遮ります。
更に、窓のシャッターを全部降ろして、直射日光を遮ります。

たとえ室内が暗くとも、電灯や調理器具を使って
室内の温度を上げないように気を付けます。
日中、窓を開けて、風を通そうなんてことは逆効果。
一旦、室内温度を上げてしまうと
もう、これ以上、温度を下げる手段がありません。
どうしても、暗い部屋が嫌なときは、
森や公園の木陰のベンチに座るか、
いっそのこと庭で日光浴に励むか、
長い休暇でも取って、海水浴・森林浴に出かける方が健康的。

ともかく、早朝と夕暮れには
森林や牧草地帯、麦畑を渡ってくる、
気持ちのよい冷風がそよぐ時間帯が若干あるので、
それをじっと待ちます。
緑地から来る「冷風」は、アジアの庭先で、
水を打ったときに通る「涼風」とはなんとなく違う、
きりっと乾いた感触があります。
緑地が気温を下げるって本当なんだな、と実感します。


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2007年7月9日(月)

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