伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第117回
ドイツ家屋の「ハイツング」

ドイツの何が私に合わなかったのかと言えば、
壁際に蛇腹管が並んだ、「ハイツング」
とドイツ語で呼ばれるセントラルヒーターでした。
地下にあるボイラー室で、オイルがゆったり暖まり、
それが部屋中の床や壁を巡らされた、銅管の中を通って
屋内を温めるというヒーターです。

冬場には零下10度を越える極寒のドイツで、
このヒーター以外の熱源は、
一般家屋にはまず無いのです。
しかも、1年のうちの6ヶ月間はこのヒーターが入りっ放し。
今のドイツ人は、このハイツングに強い体質の人が多いようで、
普通に生活できているようですが、
急に暖かい気候地域から出てきてきた者には、
これに対処できない体質の人が意外と多そうなのです。

ここに来て、時折、身近に聞かされていたのは、
「暖かい国から出てきた人はすぐ帰る(あまり長く住めない)」、
「冬に来た人は、ドイツに馴染めない
(早々に、精神や体調の不調を訴える人がでる)」
ということでした。
一般には、生活習慣の違いや、
冬の日照の少なさが原因だろう、と言われている事です。

対処できない体質の人や、
もともと対処できるほど強くても、
その人の年齢によって、次第に、ぼんやりしたり、
あるいはその反対にイライラが続いたり、
物忘れがひどくなったり、
急に怪我をしやすくなったりするようです。
私は、来独と同時に
さっさとハイツングの影響をたっぷり受け、
あっという間に起き上がれなくなっていました。

でも、長丁場の滞在を前提として来た以上、
このハイツングに負けて帰るわけにはいきません。
医学・漢方薬・化学・物理・素材科学・電気科学の専門書、
研究書・特許…あらゆるものを取り寄せ、
豊岡先生のコラムを基本にして、何度も何度も読み返し、
素人なりに徹底的に解決策を考えました。
ようやく、ハイツングから生じる微弱な電気を
できるだけ多く集めてアースしてしまう方法を何とか工夫し、
過ごせる状態を保てるようにはなりましたが…。
でも、これには床や壁の微妙な傾斜面を
考慮しなければならず、部屋の形や、
部屋の中に置いているものにも影響されます。
アースが上手くいっているかどうか、
毎日、入念なチェックが欠かせず、本当に骨が折れます。
しかも、これは各部屋にアースできる源が必ず在り、
3メートル近い高い天井を持つ古いドイツ家屋でのことです。

後になって、体調が悪かったときに
無意識に寄りかかっていた壁が、
アースされている部分だったと気が付きました。
見た目だけを洋風化するだけでは、気が付きにくい、
科学的な視野を加えて工夫する余地がある事柄が
世の中には、まだまだ多くありそうに思います。


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2007年8月3日(金)

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