伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第121回
ドイツにも星付きレストラン

ドイツにも、欧州のレストランを紹介するガイドブック、
あのミシュランの星を貰える
お店がちゃんとあります。
しかも、「お金財布」の中身を日々節約し、
たっぷり時間が入った「時間財布」を大事に静かに使う、
ごく平凡な日常生活の延長上にあります。

1日のうち大抵、お昼の食事が「正餐」
という位置づけがあるドイツ。
でも、これには、料理しよう!さあ、食事を楽しもう!
という人生に前向きなテンションを与える発想より、
「さあ、今日の温かい料理を皆で食べましょう」という
意味合いが大きく含まれているように思います。

スープや、ソテーしたハム、茹でたじゃがいも、
そういう加熱調理したごく普通の料理全般を
「温かい料理」と呼びます。
それを1日1回食べられるというのは、
とても「恵まれた食生活」。
冷たいハムやサラダ、チーズとパンと飲み物などの
「冷たい食事(カルトエッセン)」ばかりでは、
あんまりでしょう、という気持ちがあります。
「お昼にはサラミ・サンドを食べたわ」と言うと、
「じゃあ、夜には何か温かい料理を食べなくちゃね」
と日に1度の食事くらいは、
というニュアンスを含んで使われます。

アジアほど気温や湿度が高くないので、
そう、こまめに食べ物を
加熱調理する必要がないのかもしれません。
調理するより、燃費の節約に努める方が合理的、
お金を使わずに済む、という考え方もできます。
ですから、この国には、
「美味しい料理をゆっくり食べられるというのは、
どれほどの人生の幸せか…」という、
「お金」ではなく、「食」本来に対する
心からの敬意が実に密やかに隠れています。

「お金財布」から少〜しだけお金を出して
そして、「時間財布」の中身をた〜っぷり使って、
たまには心から食の感動を味わいたい、と
食事に喜びを見出す人は意外と多くいます。
表に出ているメニューを見て、内容と価格から
ごく普通のレストランだなと思いながら席に着き、
お店の方がにっこり微笑んで勧めてくれる、
「本日のお得な1皿」を頼むことがあります。
その1口が、
ここでデザートまでしっかり食べたい…
と、その日の胃袋・財布・時間の
予定変更を促すこともあります。
その時は、何も意識していなくても、
ああ、あの店はミシュランで星を貰っていたのか、
と何かの拍子に後で知ることが多いのです。

ワイン少々を添え、デザートにコーヒーまでを
ゆっくり頂戴したところで、
ドイツで、日本酒や刺身や天ぷらが並ぶ
和食のフルコースを頼むのに比べると
実に慎ましい価格であることさえ多いのです。


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2007年8月13日(月)

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