伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第124回
事業ごっこが役立ちました

ドイツに来た最初の年は、何かと大変でした。
まず、家財道具の一切を失った状態から、
何とか生活できるだけのものを
用意しなければなりませんでした。
その上、必要なものがたくさんあるのに、
全く無給からの始まりでした。
将来の見通しが立たない時期に
手持ちの円を要る分だけ少しずつユーロに
変えながらの生活は精神的に楽ではなく、
今になっても、その当時を思い出したくありません。

目下、1ユーロ160円代になってしまいましたが、
その時、すでに130円台でした。その少し前までは、
100円を割った時もあり、値が今の半分ほどだったのを
覚えている限り、あまりに勿体無くて、
円を換金する気分にはなれませんでした。

どうしてそんな悪い条件を最初から飲んだのか?と
いぶかる人が多いかもしれませんね。
「そんな条件なら、行かない」ということもできました。
でも、一見、華やかに見える地球規模の移動に伴って
潤沢な資金を受け取ったとたん、
あっという間に解雇に至るかのような処遇も存在する、
厳しい世界でもあることを多く見知っていたのです。
条件が厳しい分、もしかしたら、
本気で取り組む余地を与えている、かもしれない
という解釈の余地が、僅かながらありました。

しかも、毎月納める税金・年金・健康保険金に対し、
上手に対処できるよう徹底して工夫を考え、
勇気を出して実行し続けない限り、
ドイツに本気で住まうことは、
まるでお金ばかりが掛かるように見えます。
収入があれば、その半分の額をこれらの支払いのために
毎月、一旦、国に預けなければなりません。
「ドイツでは手取り給与は全額面の半額になる」、
と一般によく言われる部分です。
その前年に納付した税額と、
その年のドイツでの過ごし方に応じた還付金を加えると
毎日の暮らしの運転資金として、
動き出すというのが、この国の暮らしの仕組みです。
ドイツ住まい1年目には、その前年の納税がゼロなので、
この還付金が全くありませんでした。

でも、ままごとのように小さな規模で、
しかも、まるで成功には程遠いながらも、
法律や税金との付き合い方を専門家に教えていただいた、
事業ごっこの経験が、
こんな所で、大きな助けとなりました。
もしも、給料だけを貰う経験しか私に無ければ、
もっと厳しいハードルになっていたかもしれません。


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2007年8月20日(月)

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