伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第125回
魔法のようなアドバイス

2004年を半分過ぎた頃、
「どう暮らしていけば良いのか分らない。
けれども、このままではダメだ」
と、強く自覚しました。
移住という崖のぼりの要領が分らないのです。
言葉や習慣の違いがありすぎて、
今から思うと、大変失礼ながらも、
いつも、赤鬼や青鬼に取り囲まれているような気分でした。

そういう頃、このホームページで次々に始まった
中国、ギリシア、デンマーク、フランスなどといった
長い海外暮らしのご経験を持つ方々のコラムには
ずいぶん勇気付けられました。
コラムの中の文章から、
ドイツ人ももしかしたら一緒かな?と思える部分を
発見できるようになりました。
やがて、周りを見回し、自力で欧州暮らしをする
日本人やその他の国籍の人からの直接のお話に、
耳を傾けるようになりました。

こんな異国暮らしの初期の頃、
毎日の生活の中で頻繁に起きるのは、
「もしかしたら、自分はアジア人だから、
周りの欧州人から差別されているのではないか?」
という不安や疑念です。
ちょっと、声を掛けても無視されているのではないか、
などという、奇妙な心理が付きまとう時期があります。
それを実際に口に出すのは、嫌なものですが、
思い切って、この不安を欧州住まいに長い方に伝えました。
「本当のところ、彼らはどうなのだろうか?」と
問うてみました。

その答えは、
「自分が差別されている、などと思わないほうが良い。
一体、何を言おうとしているのか、
相手が全く分らないだけの場合が多い。」
ということでした。

これは、本当に魔法のようなアドバイスでした。
なるほど!と納得した直後からは、このアドバイスが
私と周りの欧州人との距離をぐっと近く、
親しみやすいものにしてくれたのです。
「もしかしたら、差別されている!?」と
思った瞬間、「いや、相手は分らないのだろう…」と
ワンバウンド置くことで、
「どうしたら、相手に分ってもらえるだろう?
どうして、私の言うことが相手に通じないのかな?」と
考え、工夫してみることができるようになりました。

一生懸命、外国語を話しているつもりであっても
その言葉の音質や、話の順序や表現によっては、
彼らにとって聞き取りにくく、
全く理解しがたいものになる様子です。
その時の困惑振りが、聞こえない素振りなどになります。
「あなたが何を言いたかったのか、
サッパリ分らなかったけど、以前よりマシになったワ!」
と周りから言われるようになったのは、
ごく最近のことです。


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2007年8月22日(水)

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