伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第127回
意外と堅いハイジの「白いパン」

ヨハンナ・シュピリの
「アルプスの少女ハイジ」のお話には、
羊飼いの少年、ペーターのお婆さんに、
フランクフルトに住むクララの家で貰った白いパンを
ハイジが持って行こうとするシーンがあります。
あの「白いパン」のお話は、
ドイツの黒いパンよりきっと軟らかいに違いないだろう、
という想像のもと、
じ〜んと心にしみる名場面の1つでしょう。

ところが、このドイツの「白いパン」、
毎日、目の当たりにするようになって
つくづく、思うのですが、日本でイメージする
日頃の、ふかふかの軟らかいパンに比べると、
実に堅い代物なのです。
食パンのように白く、ふかふかなパンは、
アメリカ系のハンバーガー店で使われている他は、
スーパーの棚の上に少々。
「ドイツのパン屋さん」には、これがありません。

ドイツの白いパンは、フランスパンよりも、
もう少し堅く、もちもちとした歯ごたえ。
アゴの鍛え甲斐があるものです。
大人の握りこぶしくらいの大きさのもの1つで
お腹が一杯になるという満腹のための役割があります。
同じ大きさの、軟らかいバーガー用のパンでは、
ドイツの人のお腹を到底、満たすことはできないでしょう。

感覚的なお伝えで申し訳ありませんが、
ドイツの「薄」力粉には、日本の「強」力粉の
10倍近いグルテン(たんぱく質)があるのでは、
と思います。
パンを作るために、小麦を「捏ねる」なんて、
トンでもない。水とイースト、塩、砂糖少々を加え、
ハンド・ミキサーで、ざっと30秒ほど
軽くかき混ぜたものを発酵させて使います。
日本のようにドタンバタンと生地を台に打ち付けて
「捏ねる」と堅く焼き締まって膨らみませんので、
「材料をまとめる」という手加減で十分。

日本のパン屋さんにある種類のパンや、
バターをたっぷり練りこんだブリオッシュ生地や、
パイ生地のパンは、パン生地による菓子なので、
お菓子屋さんに多くあります。
食事用のパンには、例えば、卵黄を練りこんで、
何日も軟らかさを保とうとする
作り手の意志は全く入っていません。
ドイツの白いパンは、焼きたてが一番。
乾燥した気候も手伝って、
3日も経つと、見事にコチコチになり、
岩のように全く歯が立たなくなります。
日頃は、焼きたてを少しずつ、要るだけ買います。


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2007年8月27日(月)

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