伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第128回
マイスターのドイツパン

焼き立ては芳ばしく、外側の皮はパリッと
内側はふかふかに軟らかいドイツの白パン。
イーストを膨らます分だけの砂糖しか使っていないので、
味といえば、噛めば、噛むほど甘みが増す、小麦の味です。
握りこぶしほどの大きさ1個で、お腹が一杯になります。

全粒粉で作った、黒パンは、しっとりしていて、
ぽろぽろ崩れるほど、軟らかく、
酸味が加わった味がします。
これも、ほんの5ミリ厚さの一切れで、
かなりお腹が一杯になります。
手を掛けない「自然のまま」のものを使って、
できるだけ少量で「お腹を十分に満たす」ことが
この国の中では食べ物への
大事なこだわりなのでしょう。

スーパーの袋入りのドイツパンを買うよりも、
やはりマイスターの看板を掲げた小さなパン屋の
店先に並んだパンの方が美味しそうに見えます。
でも、どう買えば良いのか分らず。
ドイツ語の先生に、
「買い方を教えてください。」
とお願いしました。
それなら、本場の美味しいドイツパンを、ということで、
連れて行ってもらったのは、
古くからある農家の角にあるパン屋。

なるほど、焼き上がりの時間を待って、
車で駆けつけたお客が扉を開けて入ってきて、
カウンターの前に行列を作ります。
やがて、オーブンの扉が開いて姿を現したのは、
鉄板1面が繋がった畳1枚分の焼きたてパン。
これがパン窯に何段も見えています。
さすがに畳大では売りにくいので、
あらかじめレンガ状に1斤分ずつ切り込みを入れて
焼いています。

この日のガイドで、やっと理解しました。
「次のお客様…、いかがいたしましょう?」と
店の人が一体、客にいちいち聞いているのは、
パン窯のどの部分にあるのが好みかを
聞いているらしいのです。
端っこにある焼き締まった堅い部分が良いか、
真ん中の軟らかい部分が良いか、
どの程度の焦げ目が良いか、…など。

一般には、大型に焼いたうちの
窯の壁際にある、堅く焼いたものが人気で、
そのために車を飛ばして遠くまでやってくるようです。
見てくれは素朴なのですが、
芳ばしく、しっとりした美味しさがあります。


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2007年8月29日(水)

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