伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第131回
ドイツ・日本…似ているのは影法師だけ

日本では、何かとドイツは
「日本とよく似ている国」として引き合いに出されます。
その理由は…
第2次世界大戦で、お互い敗戦国どうしだから。
戦後の高度成長でも、そして、近年のバブル経済でも、
日本とドイツは全く同じ時期に
経済のピークと谷底を迎えた国だから。
マイスター制度があるドイツ、
職人気質を大事にする日本、
どちらも工業技術を糧にする国だから、でしょうか?

確かに、このように言葉を1つずつ挙げてみると、
お互い「似ている」と言ってしまえば、
まぁ、「似ている」と言えないことはないのです。
でも、ドイツの中にいて、よく目を凝らしてみると、
「実際は違う!」と言わざるをえません。
どちらの国も全く異なる「別モノ」です。

そして、似ていると思っていたのに
全く事実はそうではなかった、と気がつくようになると、
似ていたように見えていたのは、
実体同士が同じなのではなく、
見る側の都合に合わせた影法師だけだったのではないか、
とも思えてきます。

人間、「似ている」ことだけに満足してしまうようになると、
「似ていない」ことについて、
不満を感じやすくなってしまい、
更に「似ているところ」を次々探したくなるものです。
あるいは、「似ていないことがある」と
気持ちの収まりどころに苦労します。
例えば「(日本と似ている)ドイツでは、日本に比べると
ずっと失業率が高くて(日本より)タイヘン!」などと、
冷めた結論を手っ取り早く強調したくもなります。
たとえ、タイヘンは事実であったとしても、
相手の国は、どのように大変か?
目下、どのように対策を打って出ているか?
などと相手の詳細を冷静に観察しようとする余裕を
失ってしまいそうになります。

「互いに違うこと」を良しとして、違うからこそ
「我がベストを尽くすことに意義がある」とする、
ドイツ的な考え方が見えてくると、
この近年の2つの国の不景気時代の過ごし方を
日本はドイツと同じだぁ…と思う日本人は大勢いても
ドイツは日本と同じだぁ…と思っていたドイツ人は
誰1人いなかったのじゃないかと思えてきます。


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2007年9月5日(水)

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