伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第135回
すべての道はローマに続く…

私は、焼き物作りのプロではありません。
15年ほど前に、
陶芸を主としたカルチャー教室の
事務方を手伝うことになったときには
どうしようかな、と途方に暮れました。

「焼き物」のことを勉強しなきゃ…と焦りましたが、
講師の先生のように作り方のプロになる
素質も時間もありません。
では、皆がやっているように
茶道の勉強からでも始めようかと思いました。
でも、茶碗のことがまだよく分からないうちから、
考え無しに茶碗に頭を下げているような気がして、
どうも落ち着きません。
その時は、「茶道の勉強は、もう少し後で始めても、
まだ間に合うかも…」と考え直しました。

いろいろ考えて、最後に決めたのは、
「自分の好みで好き嫌いを言わずに、
できるだけ、たくさんの量の焼き物を、
無差別に見て回る」でした。
重要文化財級の一品から、趣味の手作り品、
土器の破片から、工業大量生産品、
東洋のもの、西洋のもの…。
最初は、全く苦手でしたけれども、
あまり深く考えずに何年か続けてみますと、
これが結構、「面白く」なります。

そして、最近になって気が付いたのです。
私が面白いと思いながらながら眺めているものは、
「焼き物」そのものというより、
その焼き物を取り巻く「人間模様」でした。
作る人、売る人、買う人、運ぶ人、収集する人など、
焼き物には、それを取り巻いた人々を
髣髴とさせてくれる、何かがいつもあります。

さて、早、2年も経とうとするドイツ移住の前半で、
生活の手立てを打つ方向は全く見えず、
精神的には、散々な思いでした。
ただ、時間だけは有り余るほどありましたので、
気晴らしに近場のローマ人の遺跡を訪ねては
土器やその破片ばかり見ていました。

お金をあまり使わなくてもよかった場所が、
フランクフルト郊外に無数にある
古代ローマ帝国時代の遺跡だったのです。
これが後に、ひょいと解決のヒントをくれるのですから、
人生、そう捨てたものではありません。


←前回記事へ

2007年9月14日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ