伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第136回
私には時間が無い…

ドイツに住まうきっかけとなった
「あなたならどうしますか?」という一言を
投げてくださった方が、
突然、倒れたなり帰らぬ人となったという知らせを受けたのは、
2005年の長い夏の休暇が明けたころでした。

その方とは、結局、一度も、
お会いする機会が持てないままでした。
しかし、私にとっては、さらりと人生の角っこに立ち、
ポンと大きな変化のチャンスを与えてくださった方の
一人に違いありません。
一瞬、スコンと抜けたように頭の中が真っ白になりました。

そして、頭の中の真っ白いものが、
さぁっと抜けきった次の瞬間、
とても「悔しい」思いと、
「ぞっとする」思いとが一度に襲いかかってきました。
頭の中の回路が突然、繋がったように、
「私には時間が無い…」
ということが、その時になってやっと判ったのです。

私には、3つの意味で自分自身に対する、
「悔しい」という思いで振り返るものがありました。
1つは、やはり直に一言、お礼を申し上げたかったのに、
これはもう、一生かなうことがない、ということでした。
間近に「ありがとうございます」と申し上げられるのは
本当に有難いことです。

2つめは、倒れてはならない、ということでした。
人間、誰であっても倒れてはならないし、
自分も倒れないようにしなければならないし、
仮に倒れても必ず立ち上がって
最後までベストを尽くさなければならない、です。
頭が、ぼんやりしたままではダメなのです。
これが、直後から本気で
ドイツで生活習慣病に挑戦する」ことになりました。

3つめは、せっかくのチャンスを頂戴した人に
その後、ダラダラ甘えてはいけない、ということでした。
甘えていると、せっかく頂戴したチャンスを
生かせずに失ってしまいます。
私は、移住することに対して、
まだ自分のベストを尽くしていなかったのです。
再び、どこかで彼が助けてくれるのではないか、
そんな甘い期待が皆無とは言えない自分を
その時、初めて認識しました。
私は、手にしたチャンスを失いかけている!
と…ここまでくると、
時間の無駄はもはや許されなかったのです。


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2007年9月17日(月)

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