伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第142回
森の中への散歩道

晩秋の10月に入ると、
一段と気温が下がって、
森の中は、黄色、紅…色とりどりの紅葉と
凛と冴えた空気に満たされています。

このシーズンは、手籠を持って、
嬉々とした表情で森の中へ入る人の姿も見えます。
樹木の合間に顔を出すキノコを摘むためです。
一度やってみたいなと思っているのですが、
キノコ摘みのガイドと一緒でないと…、
とまだ実行しかねています。
白いマッシュルームのようなキノコが
群れる林があれば、
絵本に出てくるような、
真っ赤なキノコが顔を出す野原もあります。

野鹿の群れが紅葉した森の中を
駆け回るのもこのシーズン。
落ち葉を蹴る音を軽く響かせながら、
細身の身体をしなやかにジャンプさせるのを
一瞬、あっと声を上げて
見られるか、否かというほどのハイスピード。
野ウサギや、野ネズミ、リスは、
日頃から民家の近くの散歩道をせっせと走っており、
運がよければ小さなハリネズミの姿も見られます。

ドイツのどの都市、どの町に行っても、
必ずと言ってよいほど、
近くの野山の中へと散歩道が整備されています。
フランクフルト市街の中央部なら、
マイン川の川辺の散歩道、
そこから地下鉄や電車で10分と
離れていない郊外にでれば、
深い森林の中に続く散歩道や
麦畑やリンゴ畑を横切る散歩道があります。

ハイツング(セントラルヒーター)がある
ドイツ家屋を出て、寒い日にも暑い日にも、
電車や車が全く通らない100%自然の中の小道を
3時間も4時間も掛けて、
家族や友人、愛犬と一緒に
その日1日のための散歩をするのは
ドイツの人の昔からの習慣です。

散歩する人に悪いヤツは居ないと思うのか、
自然に親しもうとするドイツ人と同じ感覚が
少しはあるようだ、と解されたのか、
私も時おり散歩道を歩くようになってから、
ご近所さんとの距離が少しずつ
縮まり始めたような気がしています。


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2007年10月1日(月)

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