伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第144回
ドイツ人は「聞き上手」!?

生まれた町から今日まで
一歩も他の土地に出たことがない、
というドイツ人は決して少なくないであろうに、
世界常識に通用する部分を、ドイツ人は
日本人よりも多くもっているように見えます。
それは、異なる文化を持つ人々が
毎日、往来しているのを見たり、
歴史の力で国境線が一夜にして変わるという
体験を繰り返したりしているからでしょうか。

突然、天から降ってきたようなヨソ者に
自分の領分を犯されないようにするために、
言語や文化が異なる人々と距離を保ちながら、
自分の安全を確保する知恵を
長い年月をかけて磨いているように見えます。
彼らから学べる、「自分」と「自分とは異なる人」との
コミュニケーションの技がありそうです。

ドイツ人の最大の特徴とも言える「聞き上手」は、
モノを言うのが苦手な日本人にとって、
まずは学習しやすいコミュニケーションの技の
一つではないでしょうか。
どういう「聞き上手」かと言いますと、
ひたすら、相手の話を黙って最後まで聞くのです。
相手がすっかり話終るまで、
話している相手を途中で手で遮ぎろうとしたり、
口を挟もうとしたりしてはならない、ようです。

たとえ相手の話の内容が分かろうと、分かるまいとです。
よほど親しい間柄でなければ大抵は無表情…
ニコリともせず黙って最後まで聞いています。
ただし、話を聞く場合ではない、と判断するときには
申し訳ないが…と最初にきれいに断られます。

時間財布に時間をたっぷり詰め込んでいる
ドイツ人ならでの悠然とした大技なので、
いつも時間が無いと急いでいる人にとっては
かなりの忍耐力が要る技です。
でも、何と言っても、この技には、
「さて、私があなたの話を聞いたからには、
次は私が話す番です」と
相手と間にフェアな話し合いの「土俵」が
出来あがるところがミソなのです。


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2007年10月5日(金)

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