伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第146回
ドイツで作る「邱家の家庭料理」

欧州に住むアジア人でいようと考えた頃、
気分転換に美味しいものを食べたいけれど、
外食するとお金が掛かるので諦めるという生活でした。
こういうときには、材料を安く手に入れて、
自分で作るに限ります。

しかし、強い硬水を使っての
調理方法の見当がつかず悩んでいました。
ベーコンと玉ねぎが多いドイツ料理ばかりでは、
さすがに飽きます。
かと言って、
硬水で和食を作れば美味しいと言うものでもありません。

硬水の調理では、油気・脂気を若干多くして
汁気と材料との馴染みを良くしながら
味付けしたほうが良いのかもしれない…
などと、考えているうちに、
もしかしたら大陸生まれの中国料理が、
ドイツで美味しく作れるアジア料理ではないかと
思い当たりました。

そう気がつくと、解決は早いのです。
今度は、邱先生の奥様、潘 苑蘭夫人によるコラム、
「邱家の家庭料理」に助けられました。
ライブラリーの中のレシピを再び最初から読み直し、
ドイツで作れそうなものをピックアップしました。
まだ日本にいた頃、連載中のこのコラムを読んでは、
ときどき実際に作ってみてはいたのです。
でも、ドイツでは中国料理なんて到底、無理と
ずっと諦めておりました。

まず、換気扇があるドイツのアパートは少ないのです。
たとえ、台所に換気扇が見えているとしても、
ダクトの先は屋外ではなく屋内で留まるのが普通です。
「揚げ物はやらない(部屋が匂うのを嫌うので)」、
「水蒸気が上がる料理は極力避ける
(密閉性が高い室内での湿気を嫌うので)」、
「オーブンを使ってゆっくり温め調理をする」
のがドイツ人。ドイツ家屋の造りは、
どうもアジア料理の調理に向いていません。

さすがに、揚げ物には今も不自由しています。
揚げ物の後には、掃除に励むしかありません。
でも、「長時間蒸す」に相当するスープものは、
大きなオーブンに鍋ごと入れて加熱することで
ほぼ似た出来栄え(?)。
「高温でさっと炒める」ものは、
短時間で温度が上がるタイプのドイツ鍋を選び、
十分加熱してから使います。
ガス火のようにはならないけれども、
電熱器でも何とかいけそうだ、と分かったとき
「これで、ドイツに居てもアジアの味覚の幅が広がる」と
心からほ〜っと安堵したのを、今でも覚えています。


←前回記事へ

2007年10月10日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ