伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第148回
会社員生活を辞められそうにないなぁ…

ドイツの人も、会社員として一度、勤めを始めると、
そう簡単に辞めたくはならないようです。
これは、日本とドイツで「似ている影法師」です。
でも、実態は違うのです。
雇われている会社員の様子がずいぶん違います。
「労働者の権利」に対する意識に
相当な違いがあるのだろうなと思います。

まず、ドイツの人が持っている「労働者の権利」は、
正社員であろうと、契約社員であろうと
労働組合に入っていようと、いまいと、
「雇用されている限り、
全員にフェアに与えられている権利」だという意識が
個人、一人一人にあります。

そして、その権利の一つとして、
「より良い雇用条件を求めて、勤め先を変える」のは
労働者として当然だ、ということがあります。
仕事代え、職場代えには全く抵抗がありません。
故郷に近い職場だから、
身体への負担が少なくなる仕事だから、
自由な時間が増えるから、
そんなささやかな理由を軸に
より自分に合った職と職場を探します。
ただ、今以上に、毎日、忙しくなることには、
非常に抵抗を感じる人が多いのです。
この気分が、ほどほどのところで
「私には、この会社で良いや…」と満足する人を
増やしているようにも見えます。

そして、労働者の権利として、
「休暇をとる権利」があります。
正社員であろうと、なかろうと
土日祝日を組み合わせると
年間約6週間にもなる有給休暇(病欠を含まず)を
安心して取れるというというのは、
一番の大きな魅力です。
おまけに企業は、雇用されている人の、
雇用期間に相応した年金・健康保険の一部を
雇用主である企業側が負担してくれます。

これだけ休暇をたっぷり取っているにもかかわらず、
毎年、政府から個人宛に送られてくる
年金通知を見ながら、
「早く退職して、毎日ゆっくりしていたいけれど、
もうちょっと年金が溜まるまでは、
会社員生活を辞められそうにないなぁ」、
…そう考えている人が多いようです。


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2007年10月15日(月)

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