伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第167回
アジアの印刷物はまだまだこれから

10月10日から5日間、
各国の出版社が集る
本のメッセ(ブック・メッセ)が
フランクフルトで開催されました。

中国・マレーシア・シンガポール・韓国・日本など
アジアの出版社による大きな出展ブースが
ずらりと並んでいたのです。

しかし、手が込んだ装丁や重厚な挿絵を
使った史書・宗教書・文学書が多い、
欧州や中近東のブースを回った後に
アジア・ブースを訪ねたときには、
う〜むと唸ってしまいました。

これまで見てきた車や雑貨などといった
工業品の製造・販売のメッセでの
アジアの勢いに比べると、
この書籍や印刷物を通じた「本」という分野では、
成長が遅いのかもしれません。
アジアの印刷物は、まだまだ、これからです。
アジアらしい質感の良さや、
アジアらしい重厚な文化や歴史の充実感を
並んでいる印刷物からは、
明快に感じられなかったのです。

「書籍や印刷物の質を高める」ということには、
美しく高品質な、しかも早くて安い印刷技術や
製本技術だけでは、
満たしきれない何かがあります。

自由な発想が許されていて、
世界中の人を感動させてくれる著者を
多く輩出できる環境。
読者が自由に本を選ぶことが許されていて、
それを評価する楽しみに満たされた環境。
そして、それをゆっくり、
眺めて楽しむ時間が持てる環境など…。

誰もがお金を掛けてでも、
「手に入れてみたいと思う本」を生むには、
それなりに環境が整っていないと、
難しいものなのかもしれません。

今年のこのメッセのメインゲストは、
スペインの自治州、カタルーニャ。
ここは、欧州人なら知る人ぞ知る、
英雄ハンニバルを輩出した地でもあります。
なお、来年は、トルコがメインゲストです。


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2007年11月28日(水)

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