伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第178回
飢えないように・凍えないように

気温は零度を下回り、
太陽が雲に隠れたままの日が続いています。
数年、この厳しい冬の寒さを体験してみると、
ドイツ社会が保障しようとする
「人間としての生活」は、毎年のこのシーズンを
乗り切るためにあるのではないかと思えてきます。

「飢えない(温かい食べ物を保障する)」
「凍えない(暖かい住まいを保障する)」
この2つが常に社会保障や福祉の柱になっています。
とにかく、屋根無し、暖房無しでは、
人間が人間として過ごせたものではありません。

欧州は、まるで不揃いリンゴのような社会です。
人間にも、世の淘汰を厳しく繰り返させる
「格差あって当たり前の社会」。
この欧州の社会の仕組みに放り込まれてみると、
「あなたはあなた!」を認める前に、
「私は私!」と拳を振り上げて
毎日、激しく主張し続けなければならない格好になります。

ところが、「素敵なクリスマスを!そして良い新年を!」
と声を掛け合う「クリスマス」に向ける日々だけは、
何だかいつもとがらりと違う、
不思議な雰囲気を毎年味わうのです。
「暮らしの宗教行事だから。年の瀬だから。」
そんな言葉では言い尽くせない、何かがあります。
この雰囲気が一体何なのか、
私にはなかなか分かりませんでした。

もしかしたら年に1度、
主張する拳を少し緩めているのかもしれません。
「あなたもこの厳しい社会に負けるな
(飢えるな、凍えるな)。来年もがんばろう!」と
互いに励ましあうのが「クリスマス」なのかもしれない、
と考えるようになりました。

なお、ドイツのサンタクロース(聖ニコラウス)は、
クリスマス・イブの夜に
「忙しい!さあ、時間が無いぞ!」と言いつつ、
大きなプレゼントの箱を配り回るのではないそうです。
12月に入ってすぐの6日の夜、
子どもたちが置いた靴下やブーツの中に、
その年、もしも良い子だったら、ご褒美として
小さなお菓子をそっと入れてくれるのだそうです。


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2007年12月24日(月)

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