伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第179回
こんなとき、どうしますか?

日本では、海外旅行先でトラブルに合ったとき、
「ごめんなさい」を簡単に口にするなと言われます。
日頃は、小さな子どものうちから、
「ごめんなさいと言いなさい!謝りなさい!」と
親は口を酸っぱくして言い聞かせているのに。
「180度違う態度を取れ!」とは、これいかに?

「ごめんなさい」を簡単に口に出すかわりに、
「では、どうすればよいの?」という段で、
思考回路が突然プツリと止まってしまいそうです。
何も言わなければ良いというわけでも、
一方的に、何でもかんでも
相手に文句を言えばよいというわけでもなさそうです。

旅行先の習慣や、相手にもよるでしょうし、
トラブルの度合いにもよるでしょう。
そして「ごめんなさい」にもいろいろありそうです。
ケースバイ・ケースとはいえ、相手の出方を研究しながら
対処の仕方を自分なりに学ぶしかなさそうです。
さて、こんなとき、あなたならどうするでしょう?

フランクフルトの小さな中華料理店で、
食事をしていました。
隣席の10歳ほどの男の子を連れたドイツ人の母子が
支払いを終えて立ち上がりました。
「テーブルとテーブルの間は狭く、
男の子が通ったときに、そのジャケットの裾が触れて
私のテーブルの上にあった醤油指しを倒し、
醤油がこぼれました」。

服を汚すほど醤油が流れ出す前に、
私は黙って醤油指しを起こしました。
相手の母親も男の子も、私も
目が点になっているのですが、互いに無言です。
やがて母親が口を開いて聞きました。
「私の息子が、その瓶を倒しましたか?」
貴女も見ていたじゃないかと思いつつ、
「ハイ」と答えると、
その母親は息子に向かって言ったのです。
「あなたがやったのならば、
あなたは許しを請わなければなりません」。
それを聞いて戸惑った後、男の子が口を開きました。
「失礼しました」。
母親は息子の言葉を聞いてから、
ハンドバッグの中からティッシュを取り出し、自ら
テーブルの上にこぼれた醤油を拭こうとしました。

私は、それを制して給仕の人を呼び、
「ここを拭いてください」とお願いしました。
私の出方がこれで良かったのかどうか、
確かめるすべはありません。
でも、この親子からは、
「1つずつ確認していけば良いというケースも
ここでは有りなのだ」
と学習させてもらいました。


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2007年12月26日(水)

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