伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第188回
これ以上ドイツに住めません…

もしも、どうしても「フェアな話し合い」が
できそうにない相手なら、どうなるでしょう。
そんなヤツとなら、話をしようたって
時間の無駄じゃないか…ということになります。

ここで、初めて力による
「正当な実力行使」をしても良いのだね、
という余地を作ってしまいます。
あるいは、個人の日常ならば、
「なんだ、あなたは話ができない人なのね」と
お互い距離を置く関係であり続けることもできます。

「給料が足りないので、ドイツで生活できません。
上げてください」と言うことになりました。
あの…ちょっと話をしたいんですが、
という第1ステップの意思表示に対して、
幸か不幸か、「いいですよ、話を聞きましょう」
と関心を示してくれました。
第1の扉は、難なく開かれました。

でも、この時点で必要だった、第2ステップ、
「フェアな話し合いの場」作りを
私は、そのとき、全く意識していなかったのです。
こちらの「あなたの言い分も聞きましょう」
という態度も示す必要があったのに、
それが曖昧なままでした。

そこに「ここは外国だから自分の意志を言えばよい!」と
「家計がこれだけ足りません。
これ以上ドイツに住めません!」
というストレートな話を入れてしまいました。
話を持っていった先の方々には、
今から考えると、きっと、びっくり仰天!
呆れてモノも言えないほどだったろうと思います。
上げてくれという話の額が大きすぎました。
通常、上げるという感覚の、
100ユーロ程度ではありませんでしたから。

皆、今日の1ユーロ、
明日の50セントを懸命に節約しながら
生きているのは、その頃から、私も十分承知でした。
どうにもならん毎日なのは、お互い同じです。
ぐっと感情を押し殺し、
「ドイツ暮らしにはお金が掛かるので、
苦労しているのは、皆一緒なのよ…」という
相手の冷静で丁寧な説明が始まりました。
皆々、姿は一律、同じような欧州人に見えても、
南米やドイツ以外の欧州の国から
働きに来ている外国人でいっぱいだったのです。


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2008年1月16日(水)

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