伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第193回
EUの得意技

欧州27カ国が組織しているEU(ヨーロッパ連合)。
このEUの仕組みは、本当に不思議な存在です。
遠くアジアの国々から見ると、
共通通貨を持って、互いに便利にしただけに
見えるかもしれません。

しかし、EUに住んで各国を見れば見るほど
利害を乗り越え、知恵を寄せ合い、
国民が持つ多種多様の感情をコントロールして
何故そうやって互いにこれだけ多くの国が手を結べるのか、
と感嘆せざるを得ないのです。

EUを構成する国は、1つ1つ全く異なる文化や
言語、民族、人種を持っています。
歴史の中で、「絶対にあの国とは手を結ぶものか!」
と真っ向から対立した国々もEU傘下にあります。

ドイツに限って見てみれば、
お隣のポーランドと戦後の関係を修復するのに
今も互いに困難を極めています。
ナチスを生んだ土壌から再び立ち上がり、
欧州国の一員として現在の信頼を取り戻すまで、
どれほど長い道のりがあったことかと思います。

そんなEUも、最初はなんだか、ぎこちなく見えました。
まるで合体ロボットのように
幾つかの国が組み合わさった上に、
まるで、EUという名前の裾の長いマントを羽織ったよう。
右足は左足の言うことはききたくない、と駄々をこね、
皆でエヘンと咳払いをして、
マントに隠れた右足をなだめては歩もうとしていました。
どの国も個性的な上、互いに自己主張しあうので、
ぎくしゃくして見えたのです。
近年、遠くにアジアの姿がしっかり見えてくると、
俄然、歩み上手になってきたのかもしれません。

このEU、ふとマントの懐に手をいれて、
微笑みながら、そおっと取り出すのは、
銃や手榴弾といった物騒なものではなく…
「モラル」という名の綺麗な扇子です。

その扇子をまるで孔雀の羽のようにゆるりと広げ、
「あなたのお国や地域にも、
こんな素敵なモラルってものが…ありますよね?」と。
誰もに分かりやすくて納得しやすい話を
穏やかに始めて、聞く人の瞳を釘付けにするのが
とても得意で上手です。


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2008年1月28日(月)

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