伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第199回
サイズはちょうど良いはずなのに

フランクフルト中心部にある百貨店で、
荷物を下ろして、休憩用の椅子に座っていたのです。
その日、私の目の前に並んでいたのは、
紳士用ジャケット。
ブラウンから濃紺もあれば、
明るいピンクやオレンジもあり、
カジュアルな上着が色とりどりです。

見ていると、お客のほうも様々です。
背が高い人、低い人、小柄な人、大柄な人も、
肌の色が濃い人も薄い人も、
髪の色も目の色もそれぞれ違います。
アジア人も欧州人も、入れ替わり立ち代り来ては
好みのジャケットを手にとって羽織っています。
ちょっと鏡に映して姿を確かめている様子を
ぼんやり眺めていて気がつきました。

体格や身長に関わらず、
皆のサイズは一応、売り場に揃っている様子。
でも、同じデザインのジャケットを羽織っているとき、
欧州人とアジア人とでは、雰囲気が随分違います。

欧州人が羽織ると上半身の中でピタッと収まります。
なのに、アジア人が羽織ると、パフっと隙間ができて
フィット感がありません。
ちょっとしたポケットやジャンバーの留め金、
ウエストへのラインなど、デザインのポイントが
予定の位置よりぐっと下がるので
緊張感が失せて見えてしまって、残念です。
ああこれは、身長の上下ではなく、
肩や胸の厚みなど、着る人の上半身の前後の体格と
上着のデザインが合っていないんだな…、
と思いました。

同じ背格好に見える欧州人は買い上げても、
「サイズはちょうど良いはずなのに、
ヘンだなぁ」という顔をして、大抵のアジア人は、
そのジャケットを元に戻してしまいます。

アジア人が西洋人より格好悪い体型なのではありません。
雑誌の西洋人モデルさんのような人ばかりではないのが
ごく普通の欧州の日常風景です。
欧州人がアジア人より必ず手足が長いとも、
アジア人が欧州人よりいつも小柄とも限りません。
上下ではなく前後の体型のメリハリ具合を
考慮した洋服が少ないのだろうな、と思います。


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2008年2月11日(月)

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