伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第208回
春は魔法のようにやって来る

四季の光景の中でも、
まるで舞台の幕が次々と上がるように、
ダイナミックに展開するのがドイツの春です。
遠くの桜前線の便りを聞きながら、
じっくり春の訪れを待つ日本の風情とは、
趣きがずいぶん違います。

春本番は、ある朝、突然やって来きます。
まるで魔法を掛けられたように、
昨日と今日とで見える景色が1晩にして変わります。
しかも、小鳥係、クロッカス係、スミレ係など、
きちんと役割分担をした春の妖精が本当に
居るのではないかと思うほど、
毎日の春の主役が決まっています。

自分の役割と順番をきちんと守る妖精が
次々と登場して、2月から4月まで春の舞台を展開します。
妖精は、舞台に出るやさっと魔法の杖を1振り、
「今年の私の魔法の出来はいかが?」
と周りを見回して一礼するや
さっと次の出番へと舞台を譲るよう…。

2月に入る頃は、まだ序幕です。
小鳥が遠慮がちに春の歌を練習する声が聞こえます。
スノードロップ係の妖精が白い小さな花を咲かせます。

2月半ば、クロッカス係の妖精が登場すると春本番。
ある朝、白・黄色・紫と
どの家のどの庭のクロッカスも一斉に
ぱっと花を咲かせた光景が広がります。
この頃、小鳥が自信満々に歌い始めます。

寒の戻りで、雪が降ることもしばしば。
クロッカスが一瞬で消えて無くなるや、
水仙の妖精が登場。今度は、黄色いラッパ水仙が
庭や野原を一斉に飾ります。
3月になると木々の芽吹きがそろそろ始まります。
ヒヤシンス、そのあとに白いデイジー。
そして紫スミレ、レンギョウ、桜…と続きます。

本当は、昨年の今頃、この素晴しい風景を
お伝えしたかったのです。
でも昨年は、あまりの暖冬で、
木も花も小鳥も秋から調子が狂いっぱなし。
妖精の出番が混乱して、皆、滅茶苦茶でした。
今年は、なんとか順調に春の舞台が進行しています。


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2008年3月3日(月)

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