伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第214回
もっとロマンティックに!?

ドイツ語って、うんとロマンティックに、
ソフトで優しい低い音声を静かに転がすように
口にしなければならない言語のようです。
「え、日本でイメージするドイツ語とずいぶん違う。
フランス語ならともかく、まさかドイツ語を!?」
と思う人、きっと少なくないでしょう?

「違うわ、その音じゃダメ。それはドイツ語じゃないの!」
「お願いだから、英語のようにキツイ発音をしないで頂戴!」
「強い音を消して!もっとロマンティックに!」
「ソフトに…そぉっと静かに発音するのよ、いいわね?」
ドイツに着いた後、初めてのドイツ語の先生が、
厳しく、何度も繰り返し私を注意した言葉です。

ドイツ語をロマンティクにと言われてもね…。
私には、この注意の意味が長年分かりませんでした。
最近になって、フランスでフランス語を勉強した後、
ドイツに来てドイツ語勉強を始めたという
英国人女性の魅力的な発音を聞き、
お、なるほど、これか!と初めて納得しました。
先生も、この方の「言葉の美しさ」を盛んに褒めます。
まるでフランス語のようにロマンティックに聞こえるのが
「美しいドイツ語」の領域に当たるのだなと解しました。

思えば、多くの日本人が、明治開国以来、
ドイツは「疾風怒濤」のイメージであるという概念を
亡霊のように今日まで引きずっているのかもしれません。

音楽の教科書に載っている、髪振り乱したベートーヴェン。
そして、戦争記録フィルムで繰り返し伝えられる、
ヒットラーの激しくて強い口調の演説風景…。
「ロマンティック」の文字からほど遠い「疾風怒濤」のドイツ。
できることなら、一度、全部きれいに消し去って、
新たな気持ちで眺めてみると良いのかも。

私を含め、アジア人の中でも日本人は、
ドイツ語に何らかの既成概念を持ちやすいようです。
何だかひどく力強い語調がドイツ語だと思っています。
知らないうちに、ケンカを売っているようなドイツ語を
わざわざ口にしているかもしれません。

ヴァイオリンの箱を抱えた
素敵なお嬢さんであればなおのこと、
「我、腹ヘッタ!ピザ、食いにいこッじゃねッかッ!」より
「私、お腹すいたわ。ピザを食べにいきましょうよ!」
がお似合いです。春休み、語学や芸術研修で
渡独する学生さんが多いことでしょう。
「ドイツ語はソフトに、静かに、ロマンティックに」
で是非どうぞ。


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2008年3月17日(月)

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