伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第227回
ドイツに住めるかもしれない…

「なぜ、もっと早く相談しに来なかったのか…?」と
状況が一転した話を電話で聞きました。
手に持った受話器を置いてから、
私は、その場の床に座り込んだまま、
半日、立ち上がれませんでした。

ドイツに来てから、いろいろありすぎて、
涙1滴出ない代わりに、全く立ち上がれません。
何がどのように解決するという、
具体的な方向は、まだ皆目、見えないので、
油断はならないけれど、
「潮の流れが変わった。ドイツに住めるかもしれない…」
と、素直に思うことができました。

後になって聞いた話では、この2005年の暮れ、
「皆、良いクリスマス休暇を…」と挨拶をしに
ローマ皇帝級の頭を持つ人が、
偶然、そういう話の場を通りかかった、ということでした。
普段には、滅多なことで姿を見せない方だそうですが、
「なぜ、助けないのか?」という
一言を置いて立ち去ったといいます。

目には見えない、天の力に助けられたと、
心の底から思いました。
そして、今日に至るまで名前も顔も知らず、
会う機会もない、その方に感謝せずにはおれません。
イタリア国籍の男性の方だと聞きました。

そして、クリスマス休暇は「休戦」です。
その年以来、私は、毎年、そう思うのです。
クリスマス休暇には、どんな理由があっても、
相手に力尽くで立ち向かったり、
不意を突いて困らせたりしてはならない、
欧州には、そんな習慣があるのだろう、と考えています。
きっと、このシーズンを「心安らかに過ごす」ことこそ、
お互いに最高のプレゼントになるからでしょう。

ともかく、この年の暮れから正月明けまで、
私は、布団を被って、ひたすら休みました。
アジア人らしい正月迎えの形を整える、気力も体力も、
この年ばかりは全く残っていませんでした。

確か、あの年には、正月が明けてからペンを持ち、
まるで年賀状のようなクリスマスカードを記して
投函しに行きました。
その日の夜に、
ゼクト(ドイツの発泡酒)を1本開けて、
「年迎え」とした覚えがあります。


←前回記事へ

2008年4月16日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ