伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第226回
パクス・ロマーナ

「ドイツ暮らしの最初の条件が、フェアではないよ」
という話を自ら続けながら(第217回)、
こんな単純な話なら、特別、ローマ皇帝級の頭でなくても、
誰でも分かる話じゃないかと思っていました。
決して無理な要求を言っているつもりではなかったので、
相手の理解力を信じるしかない、というのが
私の最後の気持ちでした。

あらゆる局面でパクス・ロマーナを推進しつづけた
ローマ皇帝や武将のストーリーが頭に浮かびます。
異なる文化や言語を持つ国や地域から人材を集め、
互いにフェアに競わせながら、
1番良い結果を導きだそうなんて、
よほどの人物がリーダーになり続けないと、
到底、実現しそうにありません。

人材に恵まれ、各地の特産物にも恵まれ、
各地域間との交易で商運にも恵まれ、
今のEUとほとんど同じ規模になるほど広大なローマを、
結果として、長く平和に維持することができた、といいます。
パクス・ロマーナ(ローマによる平和)と呼ばれる、
統治の手法です。

しかし、時間が経っても、ただ相手を信じるだけでは、
何も進展しませんでした。
次第に、現実に引きずり下ろされそうな気分になりました。
ローマ皇帝の活躍や慈悲深い姿も、
所詮、歴史の上の物語に過ぎなかったのだ、
と悟らざるをえませんでした。

少しずつ悟り、そして諦める代わりに、今度は、
「金輪際、古代ローマ史になんかに、興味を持つものか!」
「結局、欧州にはローマ皇帝のような、
大人物が居ないんじゃないの!?」
などと、つまらない憤りの理由を重ねて、
気力を保ち続けるしかなくなりました。

でも、ついに性根尽き果てそうになったとき、
奇跡は起きました。
「運が良かった」としか言いようがありません。
今の欧州にも、やっぱりローマ皇帝級の
頭を持つ人はいたのだ、と思いました。

「なぜ(そこまで長く我慢して)、
もっと早く相談しに来なかったのか…?」と
急にそういう話になった、という連絡を受けたのは、
2005年の12月、クリスマス休暇を目前にした頃でした。


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2008年4月14日(月)

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