伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第231回
クライン・ガルテンで健康生活

町外れに出ると、ドイツのどこへ行っても、
何やら庭付きの小さな「1戸建て」が寄せ集った場所を見かけます。
土地の広さは、少なくとも30坪以上。
都市を離れれば離れるほど、1区画は広くなって、
100坪を越える立派な広さです。

それにしても、一般ドイツ家屋にしては、
あまりにも簡単な造りの家なので、
ドイツに来たばかりの頃には、
一体、どんな人が住んでいるのかと不思議でした。

実はこれ、クライン・ガルテン(小さな庭)
と呼ばれている「貸し農園」です。
そして、私には「1戸建て」に見えていたのは、
皆が好き好きに自分の区画の中に建てた「小屋」でした。
日本でのウサギ小屋住まいに慣れた身には、
これが立派な「家屋」に見えました。

春から秋にかけて気候の良いシーズン、
この自分の農園で、半日をのんびり過ごすようです。
農園なので、小屋での居住は許されていません。
貸し農園の団体ごとにトイレなど共同設備があります。
場所や面積にもよりますが、1区画につき、
年間で5万円足らずの安い賃料。

それにしても、皆、ずいぶん立派な「小屋」です。
まるで本物の1戸建てのミニチュア版あり、
ログハウス風あり、大きな木がある区画には、
まるでトム・ソーヤの話に出てきそうな樹上の小屋あり。
自家製野菜や花や果物を作って楽しむだけではない点、
日本の貸し農園のイメージとはかなり違います。

広い芝生の上に、バーベキュー用の大きな炉、テーブルと椅子。
ブランコや滑り台、そして日向ぼっこ用の大型ベンチ。
「たっぷり時間をちょっぴりお金で大いに楽しく、
有意義に過ごすための自分の庭」です。

このクライン・ガルテン、
別名シュレーバー・ガルテンとも呼ばれています。
19世紀の産業革命で、
ドイツ庶民の生活環境が急激に悪化しました。
健康が損なわれるのを懸念した医者、シューレーバーさんが、
子どもの健康維持と、皆の栄養源(食料)の確保のために、
貸し農園の積極的な普及を提案したのがドイツでの始まりとか。

週末を屋外でゆったり過ごす「クライン・ガルテン生活」。
私には、ドイツ人が無意識のうちに
ハイツング(ドイツのセントラルヒーター)から
離れる時間を確保して、
身体を休める習慣を持っているようにも見えます。


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2008年4月25日(金)

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