伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第232回
「ドイツってヴンダバァ(ワンダフルッ)!」?

ドイツには、伊万里焼や有田焼など
17世紀ごろに輸出された、
古い日本の陶磁器を収集している美術館や博物館があります。

ここに住まい始めた頃には、郷愁を満たす気持ちで、
日本陶磁器を見に、方々を訪ね歩いたものです。
展示ケースの中に1つ日本のものを見つけると、
「あ、あった!」と手放しに喜んでいました。

異国に住み慣れて、気持ちが落ち着いてくると、
同じ展示物でも、見え方がだんだん変わってきます。
やがて、展示者が鑑賞者に向けて送るメッセージには、
日本とドイツとで、国によって違いがあるようだ、
と気がつくようになりました。

どんな美術館・博物館にも、
訪れて観賞する人に「是非、気がついて欲しいな」と
発するメッセージがあります。
それに沿って、企画や展示の工夫があります。

日本の美術館・博物館で、古い日本の陶磁器を訪ねると、
順々に展示ケースを回るうちに、例えば、
「欧州に向け盛んに輸出された日本の陶磁器は、
王侯貴族の間でとても愛され、珍重され、
そして賛辞されていた!」
というストーリーに気がつきます。
そして、その結論として、
「世界に通用する、素晴らしい日本文化!」
というメッセージをなんとなく感じていました。

そして、ドイツでは、例えばこんなストーリー。
「遠く東洋の珍品を大海を越えて運ぶ
莫大な財力と貿易力を誇るドイツ!」
「昔、東洋の陶磁器は、確かに素晴らしかった。
しかし、努力の結果、
ドイツは、それに負けない製陶技術を獲得した。
現代では(過去とはまるで逆さに)、
アジア愛好家の絶大な人気を集めているのであ〜る!」

あれ、あれ…、なんだか妙な気分。
ここでは、日本の古い陶磁器は、
ドイツの魅力をアピールするためにあるような…。

そして、「世界に誇れる、素晴らしいドイツ文化!」
という強烈なメッセージを感じます。
展示を見終わる頃のドイツ人も、ウムウムと頷きながら
「ドイツってヴンダバァ(ワンダフルッ)!」
と満足げ。
どこでも「おらが国が1番!」です。


←前回記事へ

2008年4月28日(月)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ