伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第233回
あなたのこんなところが1番!

ドイツ・日本の美術館・博物館巡りで感じる、
メッセージを並べてみると、
「おらが国」の文化をアピールするために、
似たようなメッセージを発しているようで、
微妙にそのトーンが違うのに気がつきます。

「世界に通用する、素晴らしい日本文化!」
「世界に誇れる、素晴らしいドイツ文化!」
同じ程度のアピールに見えますか?
それとも、いささか、日本のほうが控えめ、
謙虚で美しく見えるでしょうか?
私には、日本よりドイツのアピール・トーンが
いつも強烈に思えます。

そして、「このドイツ文化が世界に通用するのは、当たり前だ!
その中でも特別1番なのだ!」と、
それくらい分かるだろう?といわんばかりのトーンには、
長い間、辟易していました。

でも、ここは個人主義の国、「自分こそ1番である」と
常に自己主張を続けること無しには生きられない国です。
自己をアピールするとは、そういうものだ、
という考え方にも、少しずつ慣れてきます。
そのうち、強く見せるのが上手な
ドイツのアピール力にも、またか…という程度に
受け止められるようになりました。
仕舞いには、また、いつもの調子ねと、親しみが湧きます。

その後、そんな美術館・博物館巡りで知った、
日独のメッセージ・トーンの違いから、
「私は、あなたのこんなところが1番だと思うわ!」と
ストレートに伝えるのが、ドイツで最も効率よく、
相手との距離を縮めるのでは?と思い当たりました。

私にも、毎日の暮らしの中で、たまに、ヨイショッと
ドイツ人の気持ちを持ち上げる必要を感じるときがあります。
そんなときには、
「うん、ドイツの(あなたの)こんなところが良いよね!」と。

ここでは誰もが「自分が1番!やっぱり1番!」と
自らの主張を一方的に続けることばかりに慣れているので、
「あなたのここが1番ね!」などと、
急に他人様から言われると、
素直に目をパチクリさせて、良い意味で驚かれます。

もちろん、頻繁には使えないし、
上手に心から言わなくてはならないですけれども。
そう言われると、「人間、なんだか悪い気はしない」、
共通ゾーンがあります。


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2008年4月30日(水)

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