伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第237回
コロッセウムの真ん中で

その提案を承諾するならば(第236回)…と
続く話を聞きますと、
「ちょうど、その年のメンバー募集が始まっているので、
紹介状を出します。その他の書類を調えて申請なさい」
とのこと。

紹介状と個人情報に関する書類、
そして、先方団体が用意する書類の3つを調えて、
期日までに然るべき所に提出しに行くという手順でした。
その期日というのは、確か2月末でしたから、
1ヶ月半ほど時間の余裕がありました。

「なんだ、紹介状があるなら大丈夫だろう」と
気安く考えるのは、あまりに島国日本的な発想です。
ここでは、紹介状があろうと、コネがあろうと、
その先を受け入れるか、どうかは、
先方の「判断の自由」に委ねられています。
紹介者や申込者の立場や意思とは、全く別の話です。

しかも、優秀な欧州人が、男性も女性も周りに大勢います。
幼いころから多国籍の不揃いリンゴ社会の中で、
必死になって生き抜く鍛錬をし、才能を磨き、
自分の人生チャンスを虎視眈々と狙っています。
皆、「我こそは!」と鼻息が荒く、
常にファイトに燃えています。

欧州人のファイターが持つ、人間として
自分の人生に向けて激しく生き抜こうとする力や
それに向けて燃やす闘争心は半端な勢いではありません。
「必死で生きようとする人間」の姿が常に剥き出しです。

そんなファイターたちが、どこの馬の骨だか分からない、
ポッと出のヨソ者がグッド・チャンスを得ようとするのを、
黙って見ているハズがありません。
むしろ自分のために奪い取るべき!という発想があります。

こちらの「その話、承諾!」の返事はつまり、
「そんなことは絶対に許さないッ!」と
周囲のファイターに挑戦宣言させたのと同じ意味でした。

「コロッセウムの真ん中に居るのだ」と、
ここまでくると、さすがに私でも理解できました。
目には見えない興味津々の大観衆が
無言の歓声を上げる中、「ヨソ者」対「ノン・ヨソ者」が
1つのチャンスを得るために、
制限時間付きのゲームを始める…。
「いかにも欧州人好みの舞台運び。なるほど…」と
納得した瞬間、ゲームはもう始まっていました。


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2008年5月9日(金)

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