伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第240回
アリ?それともキリギリス?

イソップ童話の「アリとキリギリス」のお話のうち、
「あなたは、アリとキリギリスのどちらですか?」
と尋ねられたら、どう答えるでしょう?
「アリに決まっているじゃないか!」と
きっと多くの人が答えると思います。

ごろんと水着姿で日向ぼっこしているドイツ人も、
聞けばやっぱり「アリに決まっているじゃないか!」と
答えるだろうな、と私は思います。

「休暇は休暇。アリが休暇を取って何故悪い?」と、
彼らは、休暇を取っている最中であって、
のんびりキリギリスしている訳ではありません。
「やるべき仕事をやり、休むべき権利のもとで
休暇を取って休んでいる」と答えるだろうと思います。

ドイツ人の夏のたっぷり休暇シーズンの様子を見て、
「なんだ、ドイツ人ってちっとも働かないんだな!
キリギリスになって、後で泣くんじゃないか?」
などといういう心配は、今のところご無用。

年間給与の半分近くは、年金や失業保険、健康保険として
国家に先払いする格好の高福祉社会。
しかも、不足分は現金ではなく、
休暇という「時間」で「支払われて」います。
支払われた「時間」がたっぷりなので、
「休暇」がたっぷり、という格好になります。
ごろんと日向ぼっこして過ごすと、
健康的で、かつ「お財布に優しく」なります。

年収600万円の人なら、実質手取りでおよそ300万円。
この上、光熱費や家賃など諸経費を支払うと、
自由な消費に使えるのは、全体の3分の1、
200万円くらいになるでしょうか。
その生活実態は実に質素で慎ましいものです。

何かと「キリギリス」だと疑われやすいドイツ人。
けれど、今のところドイツ人は、
贅沢はできないけれども、年を取れば、若い頃に
「アリとして働いた」能力に見合った年金を受け取れる、
アリ国のアリのように見えます。


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2008年5月16日(金)

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