伏見緑さんが語る「あなたの知らないドイツ」

第244回
「ごめんなさい」がありません

コロッセウムには3つの流儀があります。
第1の流儀は、
「コロッセウムでは何をやっても構わない」です。
ただし、ギャラリーが怒ってブーイングを
発したくなる行為は、やってはいけません。
そして、ギャラリーが観ていて、ちっとも面白くなく、
欠伸をしたくなるような状況が続くのも許されません。

コロッセウムでの第2の流儀は、
「コロッセウムでの勝負結果は常に正しい」です。
「さあ、コロッセウムでフェアに勝負しよう!」
となれば、これは、対決する双方にとって、
「大変名誉なこと」です。
「勝負しあうだけの対等な実力がある」と
自他共に認められたのですから。
そして、ギャラリーが納得する勝敗が決まったなら、
その結果を誰もが「正しい結論」として扱う、
暗黙の了解があります。

まるで、本気の大喧嘩のようなこの状態が、
「大変な名誉」で「正しい」なんて。
日本人の感覚ならば、
「なんて乱暴な。皆で仲良くしたら?」となりそうです。
しかし、皆にとっては、
その実力を互いにフェアに見極められるので、
「コロッセウムで能力を競うのは、大変良いこと」。

そして、第3の流儀として、
「コロッセウムには、『ごめんなさい』がありません」。
ギャラリーがブーイングを発しない限り、何をしても良いので、
「ごめんなさい」が存在する余地は皆無です。

勝負をしようと対決する者同士が、
「オマエはごめんなさいを言っていないじゃないか!」
「なにを、オマエこそ、先に言え!」
などと水掛け論をコロッセウムの真ん中で繰り返すと、
ギャラリーは大きな欠伸をしてしまいます。
「ゴメンなんて言わなくていいから、早く勝負を始めろ!」
とギャラリーは、大ブーイングを発するでしょう。

対決者にとっても、
自ら「ごめんなさい」と言うなんて信じられません。
そんなことを言うと、せっかくのコロッセウムでの
実力アピールのチャンスが消えてしまいます。


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2008年5月26日(月)

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