死に方・辞めかた・別れ方  邱永漢

去り際の美学

第12回
お金を貯めるには

もちろん、食費を倹約する、
あるいは、ムダを省くことはたいせつです。
うまいものを食べるのは、
たいへんけっこうなことなんですが、
世の中には、安いものにうまいものはない
と考えている人がいっぱいいる。

だから、たいしてうまくもないものに、
お金をムダ使いしていることが少なくないんです。
そういうムダをなくして、貯金に回すなら、私も賛成です。

私は、安いものの中にも、
うまいものがあると思っています。
また、安い材料でも料理しだいで、
おいしく食べることができるんです。

同じ食べものでも、
国によって値段が高くなったり安くなったりします。
日本では豚のモツなんかいちばん安い。
ところが中国へ行くと違うんです。
胃袋はーつ、腎臓は二つしかない。
肉は一匹の豚の中にワンサとあるんだから、
モツのほうが貴重だという考え方です。

結局、食べものが高いか安いかは、
その国の食生活の習慣にもよりますが、
料理の研究がどこまで行き届いているかによっても違ってきます。

だから、うまいものを食べたかったら、
値段は安いがうまいものを見つけるのもひとつの方法でしょう。

わかりやすくいえば、
日本で、カズノコをたくさん食べようと思ったら、
たいへんなことになりますが、
カナダへ行ったら、朝から晩までカズノコを食べても、
たいしたことはないはずです。

逆に、日本では安いからといって、
二度三度、豚のモツを食べるわけにはいきませんけれども、
工夫しだいで、安くてうまいものがいっぱいあります。

私は、お金を貯めるのも同じだと思うんです。
現代人の生活に合った方法を工夫することがたいせつなんです。

さらに、もう一歩すすめれば、
倹約したからといって、
それだけで、お金がふえていく時代でもないんです。
少なくとも、一生懸命貯金するだけでは金持ちになれない。
そのいい例が日本の国です。

ほとんど元手もないような国が、
こんなに金持ちになっている。
人のほしがる物を作って、売ることに成功したからです。
それと同じで、お金を貯めるのでも、
それをもとにして、どう儲けるかが問題なんです。
いかに金儲けのチャンスをつかむかということでもあります。

ただ、そのためには当然、元手がいる。
中国のことわざに「人の家の鶏を盗むのにも、
一握りの米くらいは必要だ」というのがあります。
倹約の精神がない人は、
その、米さえないわけですから、
金儲けのチャンスにめぐり合うことは望み薄です。





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2013年4月13日(土)

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